金居原で見つけた小さな駅

小さな駅りっちゃん

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 木之本町 2009年3月22日更新

国道303号線沿いの小さな駅 りっちゃん

 去年の秋の終わり、岐阜方面に向かって国道303号を走っていたときのことだ。木之本町杉野を過ぎて民家が途絶え、山と川ばかりの景色のなかに、ぽつんと建物があった。「小さな駅 りっちゃん」と看板が掲げられたその軒先で、年配の女性ふたりがカップとソーサを手に椅子に腰掛けおしゃべりをしている。小さな駅という響きと、山中でのティータイムに心惹かれて、雪が解けたら必ず行ってみようと思っていた。

小畑一司さん・律可さんご夫妻

 小さな駅りっちゃんは、金居原にお住まいの小畑一司さんと律可さんご夫妻が去年の春に開いた生活雑貨と軽食のお店だ。
 このあたりでは、おやつひとつ買うにも車で20分ほどかけて木之本のまちなかに行かなければならない。頻繁に遠出ができないお年寄りもいる。金居原に駄菓子を買えるお店を自分たちでつくろうというのがご夫婦の出発点だった。お菓子があってコーヒーが飲める店としてオープンし、今ではしょうゆやマヨネーズ、うどんやお昼の定食もある。

金居原のおいしいお米でつくられたおにぎり

 「金居原のお米は本当においしいんですよ」とおふたりからすすめられたのが、おにぎりだった。注文してから律可さんが握ってくれるおにぎりはほかほかとあったかく、海苔の香りが空腹を刺激する。おいしいお米の秘訣は、寒暖の差の激しい金居原の気候にあるのだという。それ以上に私が感動したのは、塩のあんばいとほろりとくずれるその握り具合で、あっというまに胃におさまってしまった。


店内はどれも金居原を故郷に持つ人たちの手づくり

 お米だけではなく、手づくりの小物から全て「金居原産」なのだという。もちろん、電気工事も店内の重厚な木のテーブルも、どれも金居原を故郷に持つ人たちの手づくりである。「金居原を出てしまった人でも地元に帰ってきたとき、自分の手がけたお店があるっていいじゃないですか」と一司さんが教えてくださった。秋に見た店先のオープンカフェ(コーヒースペース)も、一司さんや金居原の人たちで協力してつくったものだ。夏はここが絶好のビアガーデンになるのだという。
 「こういうの好きなんでしょうねえ……」。手先の器用な一司さんは、今も伊香郡内の会社に勤める現役サラリーマン、律可さんは専業主婦。ふたりとも商売なんて初めてだった。

 小さな駅りっちゃんは、県境にあるので岐阜や福井からの来店者もいて、いろんな地域のいろんな話が聞けるのが楽しくて仕方ないのだという。「小さな駅」の名は「道の駅」や「水の駅」から発想を得たもので、どこの道の駅にもないものがあるから、ここに停車する人がいる。おにぎりや、おふたりとのおしゃべりはそう思うに十分なものがある。
 春を通り越して夏に向けての私の目標は、この金居原の小さな駅まで連れて行ってくれるドライバー探しだったりする。勿論、心地よいビアを楽しむために。

小さな駅 りっちゃん

滋賀県木之本町金居原字サソラ1492-1
TEL: 0749-84-0058 / 10:00頃〜不定 / 火曜休

おにぎり 120円 / おにぎり定食 500円/ /本日の定食 500円 / やきそば、チャーハンなど 350円〜 / コーヒーなど飲み物すべて 200円

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

椰子

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