マンゴーとふるさととかき氷
kirakira Mango
頭上は曇り空で覆われ、蒸し暑い空気の中、居るだけでじっとりしてくる。不快指数、ということばが頭をよぎる。
個人的なことだが、彦根に来て10年になる。しかし気候には未だに慣れない。夏は蒸し暑すぎるし、冬は暗すぎると感じる。だからといって故郷に戻ることは考えられないが、10年経っても馴染めないことはある。もちろん、暑いからこそ喜びが増すものもある。かき氷はそのひとつだ。
7月初旬、マンゴーかき氷専門店ができたと聞いて、早速訪ねた。かき氷といえば、氷にシロップをかけたものが一般的だが、「kirakira Mango」のかき氷はそれだけではない。マンゴーシロップとともに、とろとろの完熟マンゴーが、氷の上にたっぷり載っている。
頬張ると、甘くとろけるマンゴーと冷たい氷と一緒になって、ひんやり心地よい。マンゴーを噛み締めると、南国の果物のひときわ華やかな香りが広がる。ただ甘いばかりでない、最後に口に残る甘酸っぱさがくせになって、マンゴーを追いかけるようにどんどん口へ運んでいると、店主の高野正巳さんに「マンゴーばっかり食べちゃうと、氷だけ残っちゃいますよ」と、笑いながら指摘された。はっとして手元の容器に目を落とすと、氷に比してマンゴーがずいぶん減っていた。
「kirakira Mango」で使用されているのは、アップルマンゴーのふるさと、台南市玉井区の契約農家で栽培されたアップルマンゴーだ。マンゴーは通常、熟しきらないうちに収穫され、運搬中に熟して店頭に並ぶものだそうだが、「超熟マンゴー」は、マンゴーが熟しきって自然と木から落ちるまで待って収穫する。
高野さんは、2年前にこのマンゴーかき氷に出会い、そのおいしさに魅せられたという。実は、それまでマンゴーは好きじゃなかったという高野さんがマンゴーかき氷を食べてみたのは、シロップを故郷の福島の醸造会社がつくっていることを知ったからだという。主力だった味噌や醤油醸造の部門が震災でダメージを受けた一方、震災前から作っていたマンゴーシロップの部門に支えられてその醸造会社が助かったということも知り、心を動かされたのだそうだ。
高野さん自身、震災後に福島県から移住。長くここに住もうと思う中で出会ったのが、マンゴーかき氷だった。「被災地への支援は、色々な方法がある。東北からビジネスを広げようとする場合、関西まで広げるのは難しい。自分にできる範囲で、ビジネスベースを広げる架け橋となれればと思っています」
「kirakira Mango」という屋号の由来を訊くと、そんなに深い意味はないんですけれどと言いつつ、高野さんはこたえてくれた。「マンゴー自体が、僕にとってキラキラしたものに思えたんです。それから、食べた人が笑顔になるような…そんなイメージです」
高野さんのマンゴーかき氷を食べた人は、きっと笑顔になるだろうと思う。それが、高野さんの故郷にもつながればいいと思った。
kirakira Mango
滋賀県長浜市元浜町6-15
TEL: 0749-62-2762
営業時間 10:00〜17:00
営業期間 10月31日まで
超熟アップルマンゴー氷600円 / 超熟アップルマンゴー&生キウイ氷700円 / 超熟アップルマンゴー&ヨーグルト650円
※もっとマンゴー(マンゴー増量)それぞれ100円増
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
【はま】