琵琶湖のほとりの小さな居場所
kanaria
数年前はじめてお会いしたとき、琵琶湖を眺めながら「いつか『かもめ食堂』のような店をしたいと思っている」と話しておられたのを覚えている。「かもめ食堂」とは2006年公開の映画『かもめ食堂』で描かれている、フィンランドの小さな食堂のこと。映画では、その食堂をとりまく人々の姿と美味しそうな料理が丁寧に映し出されており、私もお気に入りの作品だ。
昨年末、外海孝子さんが彦根港の近くにカフェをオープンしたらしいという話が聞こえてきた。カフェの名前は「kanaria」。その黄色い鳥の名前に、数年前の思いが今につながっていることを伝えてもらったようで嬉しくなった。
さて念願かなって訪れたkanariaは港に面して建つ、白い壁に孝子さん曰く マッチ箱のような 黄色いタイルがかわいらしい店だった。店の中に入ると大きな窓から琵琶湖が眺められるカウンターが4席と、テーブル席が4席。解体現場の古民家から譲り受けた味のある本棚には孝子さんお気に入りの本が並び、家具や小物のひとつひとつから孝子さんの「好き」が感じられる空間になっている。
実はカフェをしたいという思いを10年以上前から持っていたそう。「私自身今までカフェという場所に助けられてきたので、しんどい時や気分を切り替えたい時、好きなだけぼーっとしてもらえる空間を作りたかったんです」と孝子さん。窓際のカウンターテーブルが広いのは、一人で本を読んだり、何か書き物をしたりしながらゆっくり時間を過ごして欲しいという思いからだ。
食事のメニューはトマトベースでスパイスの利いた「チキンカレー」と具だくさんの野菜が嬉しい「本日のスープセット」。「自分が食べて育ってきたもの、美味しいと思うものを食べてもらいたくて」と、自家製の野菜やお米、伊吹山の麓で友人が営むパン工房「Komame」の天然酵母パンを使う。ドリンクの種類もたくさんあり、何をお供に時間を過ごすかを選ぶのも楽しい。
そしてもうひとつ楽しいのが、旅先などで気に入ったものを少しずつ買い集めていたといううつわたち。今日はどこのうつわだろうと毎回わくわくする。
オープンから約4ヶ月。これから訪れる夏に向けて新しいメニューも考案中とのこと。「ワークショップや教室をしてみるのも面白いかなと思っています。ここが誰かと誰かが出会って何かが生まれたりする、そういう化学反応のおきる場所になればいいなと願っています」と孝子さん。
湧き出るアイディアに時間が追いつかないよう。そして最後に「『たのくるしい』感じ」と笑顔でぽつり。歩み始めた人だからこそ言えるひと言だなと思った。
kanaria
滋賀県彦根市松原2丁目13-12(彦根港前)/ TEL: 0749-29-0079
土・日のみ営業 11:00〜18:00(夏季は19:00まで)
*土・日以外の祝日は休業
チキンカレー(サラダ•自家製ピクルス付)850円、本日のスープセット950円、ベイクドチーズケーキ400円、ブレンドコーヒー 400円、チャイ 500円、オーガニックジンジャーエール 500円 *メニューは変更の場合あり
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
【れん】