3つの辞書
インターネットの進化は有り難いもので、少し前まで調べ物があると「図書館、行ってきます」と半日がかりだった。今や、検索の言葉さえ間違えなければ一瞬にして解決する。図書館までの道草はできなくなったが、便利な時代である。百科事典と広辞苑は、今や応接間を構成する要素でしかない。引き取り手がないのは分かっているので、どうしたものかと案じている。もう……、辞書類を買うこともないだろうと思っていたが、先日『感情ことば選び辞典』を買ってしまった。
「創作者のパートナー」という帯のひと言に心が動いた。「しっくりくる感情表現が探せるスマートな類語辞典」という一文に動揺した。「しっくりくる感情表現が」ではなく、格助詞は「しっくりくる感情表現を」ではないのか。「探せる」ではなく「探すことができる」ではないのか……。格助詞にしっくりこなかったが、とにかく購入した。本体価格630円である。ついでに『ことば選び実用辞典』『美しい日本語選び辞典』を、迷うことなく手にするところなど、潔い。
さて、辞書の良いところは、見出し語にとなり合う言葉が目に入ることだといわれている。調べた言葉の周辺を意識することは、語彙力を更に高める。しかし、そのような習慣を今から身につけるのは至難、インターネットの時代にはもはや通用しない。近い将来AIが、「しっくりくる感情表現」を提案してくれるようになるだろう。
僕は3つの辞書を手に入れ、新たな道草を見つけた気分なのだ。
【小太郎】