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蓑火と森川許六

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2019年6月4日更新

 「蓑火(みのび)」という妖怪と森川許六が繫がった。
 『百鬼解読』(多田克己著 講談社)に、明治時代の妖怪研究家井上円了の一文が引用されている。「近江の琵琶湖には不思議な火があると古老は言う。旧暦五月頃の幾日も降り続く梅雨の、ま近な景色もよく見えないほどの天気の暗夜になると、湖水を往来する船夫の簑に、まるで蛍火のようなものが点々と光を放つ」。
 『犬上郡誌』には「蓑火の古跡は大藪村にあり」、その火を払へば星のように散らばるので、「蓑火又は星鬼という」と書いてあることを僕は随分前から知っていた。
 別件で、芭蕉十哲のひとり彦根藩士 森川許六を調べる機会があり、許六が編んだ俳文集『風俗文選』(岩波文庫)をめくっていた。読んではいないので、文字は意味ではなくカタチとして目に映る。
 「大藪」と「蓑」のカタチが目に飛び込んできた。「大藪の雨夜には星鬼の火を簑にうつす」という文章になっていた。
 許六は蓑火や星鬼を妖怪として捉えていたわけではない。『風俗文選』に「妖怪」の漢字を僕は発見していない。江戸時代の人々はどのように感じていたのか知りたい。『風俗文選』をちゃんと読まなくてはと……、少し憂鬱だが、梅雨時の引きこもりの言い訳にしようと思っている。

小太郎

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