「懐かしい風景」という情報

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2018年10月17日更新

 もう随分と長くこの仕事をしているので、いろんな場所に行ったし調べたりもしたが、未だに新しい発見ばかりである。世界の変化に追いついていないということもある。或いは、知識が深くなり、基礎データが増えて、世界が異なって見えてくるということもあるのかもしれない。視線の位置が変わったり、体調によっては空気の色まで変化したりする。
 過日、湖から湖岸を望む風景を見て、「やっぱり違うわ、ええ感じやー」と思った。僕は、琵琶湖の一番広い辺りに住んでいるから対岸の景色をほとんど知らない。向こう岸の営みを見ながら暮らすというのはどんな気分なのだろうと想像してみる……。
 ところで、全く新しい風景なのに、懐かしいと感じたりすることがある。僕は、嘘とはいわないが偽の記憶だと考えている。様々なメディアからの情報を受け、僕らは「懐かしい風景」という情報を蓄積している。だから、なんとなく懐かしいという曖昧な風景ができあがっていて、それによく似た風景に出会うと、肯定的に懐かしんでいるだけなのだ。ひょっとしたら、僕は偽の記憶ばかりでできているのではないかと、疑ったりもする。それでいて、積極的に偽の記憶づくりに励んだりもしている。
 前回も話したけれど、ダークサイドの住人になってしばらくが過ぎる。新発見だけが、僕自身の記憶の証のはずが、どうやらそうでもないらしいのだ。困ったことになっている。ますます「ダメだなー」と思っている。  

小太郎

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