淡海の妖怪

オタマサン(ケセランパサラン)

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 長浜市 2016年4月15日更新

2014年のオタマサン、ガガイモの種子。

 理由があって「淡海の妖怪」の再考を始めている。今回は、彦根市高宮町周辺に『オタマサン』という妖怪がいたという話だ。「いた」と過去形になっているのは、最近では見かける人がいなくなったということだ。漢字で書くと『お玉さん』若しくは『お珠さん』となるのだろうか…、その辺りのことは誰も覚えていない。
 8年ほど前、酒の席でのことだ。僕はケセランパサランという妖怪の話をしていた。
 ケセランパサランは、風に乗ってフワフワと民家の庭先などに下りてくる。白粉(おしろい)と一緒に箱の中にいれておくと、毛先を伸ばして食べたとか、白粉の上に移動した跡がついているとか、いつの間にか増えると言われている妖怪である。見つけた人の中には白粉を入れた桐の箱でこっそり飼う人もいたらしい。飼っている間、家は幸運に恵まれるが、やがてどこかへいなくなってしまうというのが定説である。
 話をもどす。同席していた友人の一人が、「子どもの頃捕まえて、ベビーパウダーの缶に入れて置いといたな。」と驚くようなことを言い出した。そうすると、「私も…捕まえたことある。」ともう一人がその言葉に反応した。
 「綿毛みたいものの先が金色をしている」「縁起がいいと、神棚に置いてた」「実際に捕まえた」「ケセランパサランという名前ではなく『オタマサン』と呼んでいた」「春先、黄砂が降るような西風の強い日、どこからともなくふわふわと白い毛玉が飛んできた」と、おどろくような証言が続いた。20〜30年前の高宮の日常にオタマサンはフツーに居たということである。オタマサンはケセランパサランのローカルネームだろう。
 ケセランパサランで面白いのは、何処からともなく飛んで来て、いつのまにかいなくなるという点だ。いずれいなくなってしまうことが前提で、人間の前に現れる妖怪なのである。事実「まだ、神棚にあるはず」と言っていた友人に探してもらったが、オタマサンは姿を消していた。
 オタマサンの話を聞いて以来、僕は毎年の春先から初夏にかけて、フワフワとした毛玉妖怪の目視を目指して空を見上げている。
 2011年、僕はオタマサンを見つけた。アザミの綿毛のように思われた。
 2014年、多賀の一圓で、ケセランパサランは多分「ガガイモ」だろうと、その種子をいただいた。
 同年、長浜市国友町の姉川河川敷公園にてグランドゴルフをしている時にオタマサンらしき物が飛んできたという手紙をいただいた。封筒の中には、拾ったオタマサンが同封されていた。
 どうやら、白い植物の綿毛が風に乗ってふわふわと飛んでくると、オタマサンという名を与えられるのだろう。そして季節も良いだけに幸運と結びつくのだ。
 何処からともなく飛んできたそれを見つけた時点が幸運なのであって、いなくなることは不幸ではない。おそらく、姿を消すまでがケセランパサランやオタマサンの役割なのである。
 何故、ケセランパサランやオタマサンの姿を僕らは見ることができなくなったのか。オタマサンの季節である。今年はどんなオタマサンに出会えるかわくわくしている。

 

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