ソラミミ堂

淡海宇宙誌 XXX 新しい夜に輝く

このエントリーをはてなブックマークに追加 2012年12月5日更新

イラスト 上田三佳

 「文化はめぐみのめぐりあわせである」というのが持論です。
 文化にとって一番大事なめぐみは「ひと」だというのも、繰り返してきた主張です。
 ひとのめぐみの特徴は、例えば物とかお金といった形のみえるめぐみがどれだけ乏しくとも、あるいはそれが乏しければ乏しい分だけ、その本領を発揮するめぐみであるということです。
 それはさながら、だんだん夜が近づいて周囲の闇が濃くなりだすと輝きを増す星のようです。
 星はそれぞれ固有の物語をもっている。そんな星と星とが結ばれてできるのが星座ですが、その星座もまた各々固有の物語をもっている。そしてまた星座と星座が響きあって、大きな神話が描かれる。だから夜空を見上げると、満天がこれ物語です。
 ひとのめぐみも、一人ひとりがそれぞれ固有の物語をもつ一方で、ひととひととがめぐりあって、また新しい物語をつくる。これもまた、ひとのめぐみが星に似ているところです。
 さて、ひとのめぐみのありようが夜空における星と同じであるとして、僕の最近の観測によれば、東と言わず西と言わず、淡海宇宙の全天で無数の「星」が一斉に輝き出した。
 また僕の観測によると、この「星」たちのなかには、かつて世を憂える大人たちから同情を込めて「失われた世代」などと呼ばれた「星」の一群があり、特異な光を放っています。
 このような「星」の「大出現」の理由について、導き出せる結論はいたって単純明快です。
 このところ、世相はどうやらますます暗い。つまり宇宙に新しい夜が来たので、これまで古い明るみに潜伏していた「星」たちが、いよいよ時代の暗がりに、自分の光をチカチカ放ちはじめたのです。

 

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