ソラミミ堂

  • 2014年11月7日

    邂逅するソラミミ堂3 ヤカンに極まる

    イラスト 上田三佳  「一期一会」という言葉を世にひろめ、ひろめただけでなく息を吹き込んでこの語を完成させたのは井伊直弼公である、ということは意外に知られていないのだろうか。遠来の客に教えると、へえ、と感心して下さる。  直弼公の著した『茶湯一会集』の中の、この語の出てくる「独座観念」という一節が素晴らしいの... 続きを読む

  • 2014年10月10日

    邂逅するソラミミ堂2 手を詣でる

    イラスト 上田三佳  今や正吉さんや悟さんの手を触らせてもらうのが目的であるかのようになってきた。沖島通いもこれで十年近くなる。  その手に対して抱く僕のおもいは崇敬というよりもささやかな信仰と言ったほうが良いかもしれない。なんとなればその手の前に頭を垂れて二三べん撫でてもらいたいくらいだ。  だから沖島には... 続きを読む

  • 2014年9月1日

    邂逅するソラミミ堂1 金次郎の出征と帰還

    イラスト 上田三佳  「まちかど遺産まいばら選考委員会」を名乗る一味に混じって、身近に隠れた町のたからもの、人の営みの記念碑の発掘・研究の片棒を担いでいます。  自称「選考委員」はいい歳をした大人たち。皆相当の経歴の持ち主ですが、今後の「選考」に支障が出てはいけませんから皆の氏名は伏せておきます。  好奇心と... 続きを読む

  • 2014年8月6日

    淡海宇宙誌 XXXXX いのちとくらしの待合所

    イラスト 上田三佳  フナズシの漬け込み作業が済んだ、という便りがあちこちの友人から届きます。梅雨が明け、夏になりました。  文化は「めぐみのめぐりあわせ」です。フナズシも、フナという「自然のめぐみ」、コメという「人のいとなみのめぐみ」、清らかな水やその他のめぐみが一つ桶の中でめぐりあい、そこに「時間のめぐみ... 続きを読む

  • 2014年7月9日

    淡海宇宙誌 XXXXIX 西からのぼるお日さまが

    イラスト 上田三佳  「〇時〇〇分発の電車に乗って下さい。駅に着いたら改札を出て琵琶湖側の出口においで下さい。ちょうど出たあたりで車を停めてお待ちしています」。  という説明だけで道順をスッと思い描いて無事僕と出会える人は淡海の人ですね。  他国から来たはじめての人は「えっ、琵琶湖側って?」とちょっと戸惑う。... 続きを読む

  • 2014年6月4日

    淡海宇宙誌 XXXXVIII 万事キュウス

    イラスト 上田三佳  教え子とその仲間が鈴鹿山麓の集落でお茶作りに挑戦しています。天下に名の知れた銘茶の産地で、一人は春からそこに住みついて本格的に挑んでいます。  二年半前、当時の区長さんがふと「これまでにいろんな先生や学生がここを調べに来てくれました。でもみんないつの間にかいなくなる」とつぶやかれたのが始ま... 続きを読む

  • 2014年5月7日

    淡海宇宙誌 XXXXVII いればてがとどく

    イラスト 上田三佳  引っ越しのてんやわんやで、桜を今年は、見たような見なかったような、という間に散りました。  毎年そんなことを言っているなあ。  つまり僕には桜は、いずこで、だれと、いかに見たかということよりも、どういうわけで、いかに見られなかったか、ということによって毎年印象深い、そういう花になってしま... 続きを読む

  • 2014年4月8日

    淡海宇宙誌 XXXXVI 日課で勝負

    イラスト 上田三佳  三月半ばにさしかかってもまだ何回も雪を降らせて、それで娘からは「忘れん坊さん!」という評価を下されてしまいました。あんなに何度も、いったいどんな忘れ物を、冬は、この町に取りに戻って来てたのだろう。  季節の戸口でそんな行ったり来たりはあったけれど、冬のつぎにはやっぱり春になりました。  ... 続きを読む

  • 2014年3月7日

    淡海宇宙誌 XXXXV 木の目魚の目花の鼻

    イラスト 上田三佳  冬の濠ばた、また川沿いの並木道など歩くとき、すっかり裸のケヤキの枝にぶら下がるヤドリギの茂りかたにちょっと不思議を感じます。左右に居並ぶあのケヤキでもあのケヤキでもないこの一本のケヤキの枝にわさわさと、あおあおとまるぼんぼんと群がっている。ちょっとケヤキが気の毒なほど。  同じケヤキという... 続きを読む

  • 2014年2月5日

    淡海宇宙誌 XXXXIV 壊すをつくる

    イラスト 上田三佳  昨年末に家を買いました。  新居は…と言っても明治の十三年に建てられた古民家で、これから少し改修をして、桜の頃には引越しをする予定です。  「一国一城の主」という言葉もありますが、みんなの家になればいいなと思います。  僕自身は井の中の小さな蛙なのだけれど、びわ湖はとても広くて深い井戸な... 続きを読む

  • 2014年1月10日

    淡海宇宙誌 XXXXIII 冬の巣箱

    イラスト 上田三佳  鳥人イカロスの末裔たちが集う湖辺のこっちの端に、このまちの港はあって、その港のそばに「カナリア」の小さな巣箱があります。  週末ごとに、仲間たちがいれかわり、たちかわり、羽を休めに立ち寄る巣箱。  めいめいのリズムで、お互いに過ごす時間を棲み分けながら、それでもひとことふたことあいさつを... 続きを読む

  • 2013年12月6日

    淡海宇宙誌 XXXXIIまぜて、ちらして、つなぐ

    イラスト 上田三佳  「まぜて」「ちらして」「つなぐ」。  料理の話ではありません。 これからの社会の話です。  今まではどうだったか。  今までは「わけて」「あつめて」「しばる」だったと思います。  同質のものを選りわけて、ひとつところにあつめて、ギュッとしばって束にする。これまではこの戦略でやってきた。それ... 続きを読む

  • 2013年11月9日

    淡海宇宙誌 ⅩⅩⅩⅩⅠ 秋がもったいない

    イラスト 上田三佳  雪崩に呑まれて、いよいよ死というものに直面した瞬間におもい浮かべたのは、ほんとうにささやかな日常の、なにげない風景でした。たとえば朝、洗面台で顔を洗っているわが子の、その後ろ姿の、つま先立ちしている、そのかわいらしいつま先。そういうものがありありと目に浮かぶ――。  たしかそんなようなこ... 続きを読む

  • 2013年10月2日

    淡海宇宙誌 XXXX 台風一過

    イラスト 上田三佳  このたびの「十八号」とその眷属たちには「これまでに経験したことのない」とか「数十年に一度の」とか「特別の」とか、とっておきだったはずのことばをまんまとつぎ込まされました。  「これまでに経験したことのない昨日」がこう易々と身近に経験されたからには、「数十年に一度の明日」や「数百年に一度の来... 続きを読む

  • 2013年9月6日

    淡海宇宙誌 XXXIX 経験のひと夏

    イラスト 上田三佳  近ごろは、尋常でない降り方の豪雨が迫った際に、「これまでに経験したことのないような」との形容を用いてその恐ろしさを警報するようになりました。  言い回しに慣れないせいか、今夏はその「これまでに経験したことのない」が列島のあちこちで経験されたという報らせが耳につきました。このような事態自体... 続きを読む

  • 2013年8月4日

    淡海宇宙誌 XXXVIII ヲニの居場所

    イラスト 上田三佳  セミの盛りに持ち出すのはちょっと気が引けるのですが、印象的だったのでご紹介します。ホタルの話です。  ことしのシーズン最中に、誘われてホタル狩りに行きました。人里の真ん中も真ん中、電車の駅のそばの小川で、最近ちょっと見なかったくらいの数のホタルを見ることができました。  ときおり間近の線... 続きを読む

  • 2013年7月8日

    淡海宇宙誌 XXXVII いつか別れと出会う日に

    イラスト 上田三佳  僕ら夫婦の間には毎年六月に結婚記念日がきます。  今年で十回目になります。十年くらいではまだ結婚も序の口なので、とくにどうということもないわけですが、おおかたの人にとってはいたって平凡な日であるはずの六月のある一日を今年も変わらずふたりの記念日として迎えられるということに感謝したいと思い... 続きを読む