ソラミミ堂

  • 2014年3月7日

    淡海宇宙誌 XXXXV 木の目魚の目花の鼻

    イラスト 上田三佳  冬の濠ばた、また川沿いの並木道など歩くとき、すっかり裸のケヤキの枝にぶら下がるヤドリギの茂りかたにちょっと不思議を感じます。左右に居並ぶあのケヤキでもあのケヤキでもないこの一本のケヤキの枝にわさわさと、あおあおとまるぼんぼんと群がっている。ちょっとケヤキが気の毒なほど。  同じケヤキという... 続きを読む

  • 2014年2月5日

    淡海宇宙誌 XXXXIV 壊すをつくる

    イラスト 上田三佳  昨年末に家を買いました。  新居は…と言っても明治の十三年に建てられた古民家で、これから少し改修をして、桜の頃には引越しをする予定です。  「一国一城の主」という言葉もありますが、みんなの家になればいいなと思います。  僕自身は井の中の小さな蛙なのだけれど、びわ湖はとても広くて深い井戸な... 続きを読む

  • 2014年1月10日

    淡海宇宙誌 XXXXIII 冬の巣箱

    イラスト 上田三佳  鳥人イカロスの末裔たちが集う湖辺のこっちの端に、このまちの港はあって、その港のそばに「カナリア」の小さな巣箱があります。  週末ごとに、仲間たちがいれかわり、たちかわり、羽を休めに立ち寄る巣箱。  めいめいのリズムで、お互いに過ごす時間を棲み分けながら、それでもひとことふたことあいさつを... 続きを読む

  • 2013年12月6日

    淡海宇宙誌 XXXXIIまぜて、ちらして、つなぐ

    イラスト 上田三佳  「まぜて」「ちらして」「つなぐ」。  料理の話ではありません。 これからの社会の話です。  今まではどうだったか。  今までは「わけて」「あつめて」「しばる」だったと思います。  同質のものを選りわけて、ひとつところにあつめて、ギュッとしばって束にする。これまではこの戦略でやってきた。それ... 続きを読む

  • 2013年11月9日

    淡海宇宙誌 ⅩⅩⅩⅩⅠ 秋がもったいない

    イラスト 上田三佳  雪崩に呑まれて、いよいよ死というものに直面した瞬間におもい浮かべたのは、ほんとうにささやかな日常の、なにげない風景でした。たとえば朝、洗面台で顔を洗っているわが子の、その後ろ姿の、つま先立ちしている、そのかわいらしいつま先。そういうものがありありと目に浮かぶ――。  たしかそんなようなこ... 続きを読む

  • 2013年10月2日

    淡海宇宙誌 XXXX 台風一過

    イラスト 上田三佳  このたびの「十八号」とその眷属たちには「これまでに経験したことのない」とか「数十年に一度の」とか「特別の」とか、とっておきだったはずのことばをまんまとつぎ込まされました。  「これまでに経験したことのない昨日」がこう易々と身近に経験されたからには、「数十年に一度の明日」や「数百年に一度の来... 続きを読む

  • 2013年9月6日

    淡海宇宙誌 XXXIX 経験のひと夏

    イラスト 上田三佳  近ごろは、尋常でない降り方の豪雨が迫った際に、「これまでに経験したことのないような」との形容を用いてその恐ろしさを警報するようになりました。  言い回しに慣れないせいか、今夏はその「これまでに経験したことのない」が列島のあちこちで経験されたという報らせが耳につきました。このような事態自体... 続きを読む

  • 2013年8月4日

    淡海宇宙誌 XXXVIII ヲニの居場所

    イラスト 上田三佳  セミの盛りに持ち出すのはちょっと気が引けるのですが、印象的だったのでご紹介します。ホタルの話です。  ことしのシーズン最中に、誘われてホタル狩りに行きました。人里の真ん中も真ん中、電車の駅のそばの小川で、最近ちょっと見なかったくらいの数のホタルを見ることができました。  ときおり間近の線... 続きを読む

  • 2013年7月8日

    淡海宇宙誌 XXXVII いつか別れと出会う日に

    イラスト 上田三佳  僕ら夫婦の間には毎年六月に結婚記念日がきます。  今年で十回目になります。十年くらいではまだ結婚も序の口なので、とくにどうということもないわけですが、おおかたの人にとってはいたって平凡な日であるはずの六月のある一日を今年も変わらずふたりの記念日として迎えられるということに感謝したいと思い... 続きを読む

  • 2013年6月5日

    淡海宇宙誌 XXXVI ムカデの便りとマメダンス

    イラスト 上田三佳  夫婦ふたりに娘がひとり、金魚一匹、ネコ一匹の一家です。  ネコはオスの黒ネコです。五年ほど前の年の瀬、風の吹く夜に我が家に転がり込んできた。  娘を身ごもってまもなく、ひどいつわりのため近所に入院していた妻を仕事帰りに見舞ってから帰宅した真っ暗な玄関先、手探りで鍵を開け扉を開けた瞬間、足... 続きを読む

  • 2013年5月10日

    淡海宇宙誌 XXXV 歯ぎしりの哲人

    イラスト 上田三佳  彼の名はイシウス。ギリシアのルクレティウスやローマのアウレリウス、ましてやルシウスなどとは一切親交はなかったが、やはり見るからに哲人の風貌である。頭の回転はもちろん速い。が、相当の石頭である。いつ出会っても、にが虫をかみつぶしたような、リキんだ顔をしているうえに、ゴリゴリと歯ぎしりするの... 続きを読む

  • 2013年4月8日

    淡海宇宙誌 XXXIV いただきますというゴール

    イラスト 上田三佳  先日、田舎の観光についての会議に招かれました。とりわけ新たな「食」の特産物をどう創るかという話。  豊かな自然と深い歴史と文化があって、食べ物だって素晴らしいものがたんとある。  「あれがある」「これもある」「こんなのもありますナ」「そんならこれも」と数え上げたら、テーブルの上はもういっ... 続きを読む

  • 2013年3月6日

    淡海宇宙誌 XXXIII 愉快な「にゅーみん谷」

    イラスト 上田三佳  美しい水の名の付く駅から川を遡るとその集落に至ります。  かの有名な北欧の妖精の住む谷の名をもじり、村の誰かが冗談めかして言ったのが、言われてみれば確かにそんな雰囲気があるね、わかるねということで、だんだん本当らしくなってきた。  そんな「にゅーみん谷」の人と場所とが大好きでもう何年も通... 続きを読む

  • 2013年2月6日

    淡海宇宙誌 XXXII ふたりでさんぽ

    イラスト: 上田三佳  幼いわが娘とさんぽしていると、娘につられて、道端のほんのちいさなものにも、道すがらのちょっとした出来事にも、ひとつひとつに眼をとめ、足をとめて、驚いたり、感心したりするようになります。   ほらほらテルハ、こんなところに、こんなものがあるよ、あんなところで、だれかがあんなことをしている... 続きを読む

  • 2013年1月7日

    淡海宇宙誌 XXXI 三つの舟

    イラスト: 上田三佳  相変わらず今年もいっぱいの荷物を抱えて、ざぶざぶと年の瀬に足を踏み入れてしまいました。無事渡りきることができるでしょうか。  この一年を振り返っても、またそのもっと以前からのことを考えてみても、自分はいつでも「三つの舟(船)」に乗り継いで来たんだなあと思います。  「渡りに舟」「乗りか... 続きを読む

  • 2012年12月5日

    淡海宇宙誌 XXX 新しい夜に輝く

    イラスト 上田三佳  「文化はめぐみのめぐりあわせである」というのが持論です。  文化にとって一番大事なめぐみは「ひと」だというのも、繰り返してきた主張です。  ひとのめぐみの特徴は、例えば物とかお金といった形のみえるめぐみがどれだけ乏しくとも、あるいはそれが乏しければ乏しい分だけ、その本領を発揮するめぐみで... 続きを読む

  • 2012年11月10日

    淡海宇宙誌 XXIX 九の通りのテルちゃん

    イラスト 上田三佳  猫のマメが僕らの布団に潜りたがるので、いよいよ秋と思います。  僕らが住んでいる集落は琵琶湖に面しているので、秋の終わりから冬にかけてはしばしば、西からの強い冷たい風に曝されます。それをやり過ごす工夫が古くからの町並みに表れている。  湖岸に平行して、集落の端から端まで南北に、バスの通れ... 続きを読む