ゲストハウスと町の関係

ゲストハウス無我

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2013年9月27日更新

村田 一さん・典子さん夫妻

 去年くらいから、彦根にゲストハウスができると聞いて、とても楽しみにしていた。古民家を改装したゲストハウスで、以前紹介した小江戸ひこね町屋情報バンクの成約第1号の物件だという。
 「ゲストハウス」という言葉には複数の意味があるけれど、ここでいうゲストハウスは、旅人向けの簡易宿所を指す。宿泊料金は安く、たいてい素泊まりでドミトリーと呼ばれる相部屋になっている。僕は学生時代、大学を休学して1年ほど海外を放浪していた。いわゆるバックパッカーというやつだ。学生の貧乏旅行だから、ホテルに泊まることは稀で、専らゲストハウスを利用してきた。海外旅行者の間では、お馴染みの宿泊施設ともいえる。最近になって日本でもゲストハウススタイルの宿泊施設がずいぶん増えてきたようで、彦根にもゲストハウスがオープンするというニュースは僕の心を踊らせた。

母屋の座敷は宿泊者の共有スペースになっている

 宿の名前は、「ゲストハウス無我」。8月15日にプレオープン、9月1日から本格的に営業をスタートした。経営するのは、村田 一さん・典子さん夫妻。二人とも旅行が好きで、いつか旅人向けのゲストハウスをしたいと考えていたそうだ。昨年、小江戸ひこね町家情報バンクを通じてこの古民家のことを知り9月に購入。それから1年近くかけて改装などを行いオープンにこぎ着けた。
 母屋は大正時代に建てられた木造2階建て。1階の座敷は宿泊者の共有スペースになっているほか、キッチンでは自炊も可能だそうだ。庭を挟んだその奥には新築の離れがあって、ここがドミトリーになっている。ドミトリーは3部屋あって、男女別の相部屋で最大14人が宿泊可能だ。
 「旅の醍醐味は人との出会い。お客さんとの出会いを大切にしたい」と話す村田さん夫妻。取材に訪れた日、宿にはメキシコ人の若者が宿泊していて、彼と村田さん夫妻、そして僕の4人でテーブルを囲んでしばらく談笑となった。そんな一コマがあるのもゲストハウスならではのことだ。

庭の向こうに新築のドミトリー

 僕の旅を思いだしても、記憶の中で印象に残っている町には必ず、いい宿と宿屋の主人、そしてそこに集まる旅人の仲間たちの存在があった。いい町にはいい宿が欠かせないし、旅人にとって、いい宿のある町はいい町でもある。
 新築の快適なドミトリーに風情のある古民家の佇まい、座敷からぼんやりと庭を眺めながら過ごすひととき……。僕が彦根にはじめてやってきた旅人でこの宿を訪れたなら、気に入ってしまってきっと沈没(旅人の間ではだらだらと長期滞在することをそう呼ぶ)してしまうだろう。そこには素敵な仲間たちが集まって、彦根という町が好きになるに違いない……。なんてことを村田さん夫妻と話しながら考えていた。ゲストハウス無我が旅人にとって、そんなゲストハウスだといいと思ってい
る。

ゲストハウス無我

滋賀県彦根市芹橋1-4-43
http://hikone-muga.com

男女別相部屋素泊まり 3,200円
(寝袋持ち込み 2,700円)

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

編集部

スポンサーリンク
関連キーワード