ぜいたくな時間を味わう

めん処 もみじ

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 東近江市 2013年9月11日更新

高橋紀子さんと小椋羊子さん

 思わずごろんと昼寝がしたくなるようなラーメン店である。東近江市奥永源寺地域の杠葉尾(ゆずりお)という集落に昨年11月「めん処 もみじ」が誕生した。
 杠葉尾は永源寺ダムのさらに奥、三重へとつながる石榑トンネルのすぐ手前に位置している。三重との玄関口であり、夏場はキャンプ場としても人気なため賑やかになるのだが、その喧噪からは少し離れた集落の中ほどにこの店はある。うっかりすると通り過ぎてしまいそうになるので、国道421号線沿いに立てられている看板とのぼりを見逃さないよう集落へ。じきに川沿いに建つ木造平屋の建物にのぼりがはためく様子が見えてくる。
 この店を切り盛りするのは、すぐ近くの政所町に暮らす高橋紀子さんとその友人の小椋羊子さん。快活でムードメーカー的な存在の紀子さんと穏やかな笑顔でサポートする羊子さんのいいコンビだ。紀子さんは70歳を越えた今でも、店の他に茶畑や畑の仕事、地域の仕事など休む間もなく動き回っている。忙しいくらいがちょうどいいと明るく話す紀子さんだが、3年前にご主人を亡くした後はすっかり元気をなくしてしまったのだそうだ。その様子を見た息子さんたちが、料理や人の世話が大好きな紀子さんにと薦めてくれたのがラーメン店の出店だった。紀子さんも「この年齢になっても自分に出来ることがあるのなら、どんなことでもしたい」と一念発起。空き家になっていたこの建物と庭を1年半かけて徹底的に掃除して開業した。

 店内はなんと畳敷。机に生けられた野の花の他には余計な装飾も無く、手入れの行き届いた空間は清々しく居心地がいい。部屋の三方が窓になっていて川からの気持ちの良い風が吹き込んでくる。食事をいただく机も家庭的なちゃぶ台だ。紀子さんはそのちゃぶ台を愛おしそうにぽんぽんと叩きながら「私がお嫁に来た時から使っているちゃぶ台。息子たちはこれで育ったの。その思い出がしみ込んでるから捨てられなくて」と教えてくれた。なるほど、ここに来ると里帰りをしたようなほっとした気持ちになるのは、そういうところからなのかもしれない。
 メニューはラーメンや田舎そば、揚げたての永源寺産舞茸がトッピングされた舞茸天ぷらラーメンなど麺類がメイン。しかし舞茸のたっぷり入った香りのいい舞茸ごはんもぜひオススメしたい。運が良ければ旬の野菜や山菜を使ったおまけの1品も付いて、お袋の味を堪能できる。

「ここに居ると空気の音が濁っていないんです。川の流れや小鳥の声、風の音が聞こえてきて、木々が風で喜んでいるように思えてくる。作り物の音が何一つ無いのがここの売りです」と紀子さん。窓から見える四季折々の風景は、長年この土地に暮らす2人でもはっとさせられるほど美しいそうだ。
 取材にお邪魔した日、京都から来たという男性客たちが食後にごろんと横になり風に吹かれながら目を閉じていた。きっとこれ以上のごちそうはないだろう。

めん処 もみじ

滋賀県東近江市杠葉尾町854
営業時間 11:00〜17:00
定休日  火・金曜日

ラーメン600円、舞茸天ぷらラーメン700円、田舎そば600円、舞茸天ぷらそば700円、冷やし中華700円、舞茸ごはん200円

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

青磁

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