時と人と想いをつなぐセレクトショップ

　江戸時代より浜ちりめんの町として栄えた長浜。大通寺へ通じる表参道には今も数軒の呉服屋がある。黒壁スクエアから一歩奥に入るこの通りには、昔ながらの雰囲気を残す店が多い。セレクトショップ TuRu Legendは大通寺から徒歩2分、参道沿いにある。
　木のやさしさを感じる店内には、平井さんご夫婦の心を射止めた服や靴、アクセサリーなどが並んでいる。実はこの店、100年以上の歴史を持つ「柏鶴」という呉服屋でもある。10年前、2人であたためてきた夢に向けて動き出した時、妻のつる子さんの生家であるこの場所に出店することは自然な流れだったという。呉服屋の一部を自分たちで改装。半分は呉服屋を残して店はオープンした。訪れる人のなかには、先代の懐かしい話をする人もいるという。
　つる子さんは「扱う商品は変わっていっても、お客さまにお気に入りを見つけてもらって喜んでいただく、そういう思いはおじいさんやお父さんのころからずっとこの場所にあると思います。その思いは残していきたいですね」と語る。
　店内には、服や靴はもちろんだが、キャンドルやジャム、そしてなんとも愛嬌のある廃材アートが並んでいる。とても居心地がいい……。2人の商品を選ぶ基準が「自分たちが好きでほっとできるもの」だからなのだろう。

　洋服は自然素材で肌触りのいいものをセレクト。自分でも着て、洗って、体が呼吸している気持ちよさを感じた上でお客さまにも紹介している。もうしばらくすると、スコットランドの軽くて暖かいシェットランドウールなどインポートのニットが入荷する予定だ。靴は、今いちおしであるNAOTのサボ。2人も毎日履いている。コルクのインソールが想像以上に足にフィットするこのサボを、履いてお気に入りの靴に育てて欲しいそうだ。
　アクセサリーや雑貨は作り手との出会いがきっかけで置いている場合が多い。オープン当初から扱っている工房 Troll 吉岡まさよさんの銀アクセサリーは、自然のものをモチーフにした、どこか北欧の雰囲気もあり、控えめでいて存在感のある作品ばかりだ。
　「ただ販売するだけでなく、その商品に込められた作り手さんの想いをお届けする役割を担えたらと思っています。扱う商品にはひとつずつ『良いところにお嫁にいくんだよ』と声をかけるんです。そうすると引き寄せられるように不思議と良い縁が生まれるんです。商品を気に入られたお客さまのうれしさが私たちのうれしさになり、それが作り手さんのうれしさになる。そういう小さくても幸せな輪がひとつひとつ広がるといいなと思っています」とつる子さん。
　取材中ふらりと訪れたお客さんと、あっという間にNAOTのサボで大盛り上がり。つる子さんの楽しそうな声が聞こえてきた。

【れん】