夢見るような手まり寿司

　大橋博文さん（42）ゆかりさん（42）夫妻が営む和食店「夢ものがたり」は今年で開店12年目。界隈では珍しい「水晶鍋」が食べられるお店だ。水晶の塊をくり抜いた鍋で、鍋料理をいただく。水晶には遠赤外線効果や、食材の臭み、不純成分を除去する浄化作用があり、具材などのアクが出ず美味しく食せるという。さらに博文さんは、ふぐ調理師の免許もお持ちなので、ふぐの鍋もある。夢ものがたりは鍋料理専門店かと思ってしまうのだが、さまざまな創作料理も用意されている。そのひとつが、手まり寿司だ。お寿司の創作と言ったらいいのだろうか、ネタが寿司飯に密着し形が鞠に似てまん丸である。普通のお寿司と比べて約1・2倍の寿司飯を使うから若干大きめだ。ネタを寿司飯と密着させるためにはラップを使う。ただ、ご飯とすんなり密着してくれるものばかりではない。例えばゆで卵の黄身をおぼろ状にしたものは、最初に密着させておいても寿司飯からはがれてきてしまうなど、普通にお寿司を握るよりも手間がかかってしまうという。それでも博文さんは手間をおしまない。
「美味しいのはもちろん、思わずわぁかわいいと声が出るような料理を出したいと思い始めました。魚をはじめ、ローストビーフや生ハム、炙ったカマンベールなど、50種ほどのネタがあります」。
　実にバラエティに富んでいる。
そしてさらに博文さんは、ご飯でアニメなどのキャラクターを造形した「キャラ手まり」に手まり寿司を進化させた。寿司飯ではなく普通の白米や、ふりかけを混ぜるなどして色味をつけたご飯を使う。「子ども連れのお客さんのリクエストで当初は丸いご飯の形でできるキャラクターを作っていたんですが、今は形にこだわらず増えてしまって。ウルトラマンは自信作ですが、今どきのお子さんはご存知ないですね」と笑う。
　日替わりの「おまかせ手まり」はこの日、キャビアがトッピングされた湯葉や、エビ・アボガド・トマト、花びらのようにあしらった漬物などが並んだ。本当に彩りが美しい。大人でも注文できるというのでキャラ手まりもお願いした。キティちゃんやアンパンマン、こいのぼり。キャラの表情は海苔などであしらっていて作業の細かさに感動すら覚える。何より一口で食べるかどうか、本当に食べるのか……、考えるほど「かわいい！」に尽きる。
「夢ものがたり」の店名には、食を通じてお客さんに夢を与えたい、そして楽しい夢を見るように食事のひとときを過ごしてもらいたいとのご夫妻の願いが込められている。それを象徴しているのが手まり寿司やキャラ手まりなのだと思う。　

【椰子】