ファブリカ村から始まる……

ファブリカ村

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 東近江市 2011年11月30日更新

 能登川にファブリカ村というスペースがある。カフェがあり、ギャラリーがあり、アトリエがあり、ライブスペースがある。そして織機がある。ここは、10年前まで麻製品をつくる北川織物工場という場所だった。
 ファブリカ村を運営するのは、北川陽子さん(49)と順子さん(47)姉妹だ。
「創業者の父の死後、操業を停止していました。けれど、織物・染物をしていたこの工場を地元のために役立てたいという思いがありました。湖東の地場産業であった麻製品を知ってもらうと共に滋賀県発のアートやクラフトを発信する場になればと工場の姿のまま2年前にオープンしました」。

北川陽子さん(左)と順子さん姉妹

 週末だけの営業だが、いつもたくさんの人でにぎやかだ。ギャラリーではアートやクラフトの作品展が入れ替わりで行われ、展示のたびにワークショップがあり、「つくる」という体験ができる。陶芸の窯や、順子さんが手がける麻製品の展示場もある。
「ここはつくる喜びのある場所なんです。ギャラリーもアトリエも、ライブスペースも貸しスペースとして利用していただけます。何かをしたいという人たちへのきっかけづくりの場であってほしい。カフェも、自分のお店をもっていなくてもワンデイカフェ方式で出店していただけます」。
 家業を手伝ってきた陽子さんは痛感していることがあった。クオリティの高い麻製品をつくるだけではだめだということ。使い手がクオリティを理解し、つくり手の思いを共感して初めて製品は生きてくるということ。

「素晴らしいアート、クラフト作品があったとします。使い手はただ飾るのではなく、日常で使ってほしい。デザイン性のあるものを日常に取り入れていくことが大事だと思うのです。また、つくり手は単に自己満足ではなく、自分の作品を使ってもらうというプロ意識を育くんでもらえるはずです。つくり手同士の交流は意欲の高まりにもつながるでしょう。使い手、つくり手、ファブリカ村は、それぞれの意識を変えるための提案の場所でもあるんです」。
 私がお邪魔したとき、ちょうど、カフェの隣にある織機を職人さんが始動させようとしていた。わずかの時間だが織機を動かす日があるそうだ。スイッチが入り、工場に大きな音が響いた。「織機のリズムはね、心臓の鼓動のリズムと同じなんですよ」。私には埋もれていた思い出の音が甦った。生家の近くにも、織物の下請けの仕事をしている家があった。私も織機の鼓動を知っていたのだ。そのことが嬉しく、それだけでファブリカ村から何か始まる予感がした。
「ここに来れば何か楽しいことがある。それがファブリカ村」だと北川さんの言葉だった。

art × cafe × shop ファブリカ村

滋賀県東近江市佐野町657 / TEL: 0748-42-0380
営業日 毎土日 / 営業時間 11:00〜18:00

竹笹堂ワークショップ「彫って摺って木版年賀状を作ろう」

2011年12月11日(日)14:00〜16:00 / 定員30名
京都で120年木版技術を継承する竹笹堂がレクチャーする木版年賀状づくり。好きな図案を彫って5枚の年賀状を作ります。
材料費込3,000円★要予約 / 竹笹堂(担当 森)TEL: 075-353-8585

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

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