満ちても欠けても半月

半月舎

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2011年10月12日更新

半月舎の店内

 京町の交差点付近、今でも「浦部薬局」の看板がかかる建物に、「半月舎」というお店がオープンした。古本屋兼デザイン事務所だという。めずらしい組み合わせだが、舎主の上川七菜さんがデザインを、舎員の御子柴泰子さんが古本を担当し、二人で始めた。場所も家賃も二人で半分こするから、「半月舎」とつけたそうだ。
 「古いものはふたりとも好きなのですが、なかでも古本屋を選んだのは、彦根に古本屋がなかったからです。古い家も骨董屋さんも多いまちなのに、古本屋がないのは不思議だなと思っていたんです」と話す御子柴さんが選書した本棚には、文学、美術、旅、歴史、生活、専門書など、300冊ほどが並ぶ。「誰かが手放す本の行き場のひとつになればと思っているので、特にこのジャンルを、ということは今のところないんです」

舎主の上川七菜さん(右)と舎員の御子柴泰子さん

 「古本には、世代を越えたコミュニケーションを生むという魅力もあるんだなと、店を始めて気づきました」と、よく店番をする上川さんは言う。上川さんの現在の仕事は、地元大学や行政、NPOのイベント企画や広報など。 滋賀県の広報誌”cococu”に創刊から参画、滋賀県の職人とともに行った展示「ここくらし」での活動など、上川さんの仕事は、企画・取材を通じてデザインを生み出すという姿勢がある。「デザインということばを使うとイメージが限定されがちだと思うんですが、ここでの暮らしがちょっと豊かになるようなことを、私なりのやり方でやっていきたいと思っているんです」
 そのような思いから、半月舎がひとの集まる場所になればと、小さいライブや読書会、ワークショップなど、定期的なイベントを計画しているという。名前は半月板(膝にある骨のなまえ)にちなんで「半月晩」。営業時間終了後、集まった人々が膝をつき合わせて過ごす時間だ。

文学、美術、旅、歴史、生活、専門書など、300冊ほどが並ぶ

 「半月舎」は、春に開業の構想を始め、夏に準備をし、九月、あっという間に開店。人や出来事の巡り合わせに背中を押され、いろいろな人にお世話になりながら、どんどん事が進んだ。そういう巡り合わせから「半分」ということを改めて意識したと上川さんは言う。「古本屋とデザインは、まったく違う職種ですが、どちらも扱うときには相手がいて、それを必要とする相手と組み合わさって、ようやく意味あるものになるものになるというところは同じ。相手と半分こするということが、いまこそ必要な気がしているんです」
 交差点近くの店の前は、いろいろな人が通る。列をなして下校する小学生、塾へ行く高校生、自転車や徒歩で通勤するサラリーマン、買い物に行く人。ソファに座ってページをめくっていると、通りをゆきかう見知らぬ人々の日々と、地続きなのを感じる。

半月舎

滋賀県彦根市京町3丁目5-41
営業時間 11:00〜18:00 / 定休日 木曜・日曜・祝日

古本: 買い取り、販売は11月に開始。扱う本のジャンルは問いません。引き取りに伺うこともできます。
デザイン:各種デザインやイベントの企画などを扱っています。ご相談ください。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

編集部

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