とんかつ・つゆしゃぶ あ桜

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2009年11月17日更新

四番町ダイニング内の「あ桜」

 天高く、馬肥ゆる秋。さわやかな気候で食欲が旺盛になることを表す言葉だと思っていたけれど、どうやら本当の意味はずいぶん違うようだ。中国北方の古い諺で、秋になると襲ってくる騎馬民族への警戒を指しているとあった。
 それにしても、食べることが楽しくなる季節である。秋の始まりにとんかつとつゆしゃぶ料理の店「あ桜」が、四番町スクエアにオープンした。
 あ桜では四万十ポークと呼ばれる柔らかく風味豊かなブランド豚のみを使っている。実際「ひと口ひれかつ膳」を注文した私は、そのあまりの柔らかさにあっという間に四万十ポークのファンになってしまった。

柔らかい四万十ポークをつかったとんかつ(写真は棒ひれかつ)

 とんかつというとソースをつけて食べるのが定番だけれど、あ桜では、お店で手作りするソースのほかに、趣向に富んだ味つけを用意してくれている。お膳が運ばれる前に手渡される胡麻の入ったすり鉢とすりこぎが、そのひとつだ。食べる直前に自分ですった胡麻は、好みでソースにトッピングする。「キャノーラの一番絞りで揚げ、あっさり感を大切にしたとんかつです。だから胡麻のすり具合は、油が出てしまわない程度をおすすめしています。胡麻の香りが四万十ポークをひきたててくれるんですよ」と接客チーフの山下泰代さんが教えてくださった。
 もうひとつが、塩である。四万十ポークの風味を最もシンプルに味わうことのできる食べ方だ。切り分けたとんかつの断面にちょんと塩をつける。さらにレモンも用意されている。手作りソースはマイルドと中辛口、わさびじょうゆ風味の3種があるから、最初はソースのみで、さらに胡麻を足し、そして塩もレモンもとなると最大で8通りの味つけ方ができる。次は何をつけようかと逡巡するのが楽しい。
 添えられた千切りキャベツにかける手作りのドレッシングも3種。とんかつ用のソースやレモンも使ってみる。キャベツはお代わり自由。かといって何度もお代わりをするのは気が引ける…、どれくらいお代わりをしていいでしょうか、と山下さんに尋ねると「おいしく召し上がっていただければ何よりです。どれだけでもお代わりをしてください」とすすめられた。

豚のしゃぶしゃぶをそばつゆで食べる「つゆしゃぶ」

 味つけの組み合わせを模索していくとんかつと対照的なのが、もうひとつの看板料理、つゆしゃぶである。いわゆる豚のしゃぶしゃぶ鍋なのだが、付けダレがそばつゆなのである。ダシをとった湯にくぐらせた豚三枚肉は適度に油が落ち旨味が凝縮される。豚肉のコクとそばつゆの風味の調和を極めていくのが、つゆしゃぶのスタイルといえるだろう。
 天高く、馬肥ゆる秋という言葉は転じて「秋には必ず異変が起きる」という故事成語になっている。私にとってこの秋の異変は、とんかつといえばソースという定番からの脱却ではなかったか……。

とんかつ・つゆしゃぶ あ桜

滋賀県彦根市本町1-7-34 ひこね食賓館 四番町ダイニング1階
営業時間 11:30〜14:00・17:00〜21:00 / 水曜休
TEL: 0749-22-4747

塩ロースかつ膳120g1,280円〜、ひと口ひれかつ膳3切れ1,380円〜、ミルフィーユかつ膳1,380円、アレンジかつ丼 950円〜など / つゆしゃぶは2人前より2,600円〜 / ランチや膳メニューは千切りキャベツ、ご飯、味噌汁、漬物のお代わり自由

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

椰子

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