笹きりと白雪

手打そば そば吉

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 多賀町 2009年10月27日更新

変わり蕎麦は職人の高度な技術が必要だ。

 秋といえば、山々の紅葉を愛でながら食べる新蕎麦である。ここ数年、湖東・湖北にも独特の蕎麦専門店が増え、店の個性に触れながら食べ歩く嬉しい季節だ。僕にとって思い出深い店のひとつに多賀町の「そば吉」がある。たまに立ち寄る程度だが、僕の大切なシーンの中にそば吉はある。
 大晦日に蕎麦打ちを思い立ち、蕎麦粉を買いに行ったのもそば吉である。年越し蕎麦の仕込みで忙しい最中、打ち方までもご教示いただき丁寧に対応していただいた。友人の娘さんの訃報に、蕎麦を食べにでかけたのもそば吉だった。とにかく悔しいからと食べた。いつかは一緒に食べるだろう蕎麦だった。
 蕎麦がきを食べたのもここが初めて、蕎麦湯を旨いと思ったのもそば吉で、蕎麦湯について語ることができる男になった。
 そして、変わり蕎麦「笹きり」にはずいぶん思い入れがある。
 そば吉は、太打ち、細打ち、変わり蕎麦、天盛りなど、数少ない王道をゆく蕎麦屋である。大抵、僕は、太打ちと細打ちの「二色天盛りの大盛り」を注文するのだが、たまたま壁の短冊に「笹きり」とあった。本当にたまたま、その日だけだったことが解ったのは数年を経た、今になってのことだ。
 「変わり蕎麦」というのは、更級粉(さらしなこ)で打った蕎麦に柚子や芥子、茶などの風味をつけた蕎麦だ。精製度の高い真っ白い蕎麦粉で打った蕎麦は透明感がある。
 普通の蕎麦粉は水を加えて打つけれど、更級粉は熱湯で練る。つながりにくいのだ。「湯練り」「湯捏ね」という。一旦冷ましてから再び練る。この時、柚子や芥子などを練りこむ。手間入りで、職人の高度な技術が必要な蕎麦だ。
 「笹きり」は、儚く薄い緑色で「清」という文字を使って伝えたい風味だった。以来、訪れる度に僕は短冊を確かめることになった。

柚子きりと多賀そば二色盛り

 先日、思い切って「笹きりはどうなったのだ。もう打たないのか」と聞いた。勿論、実際は丁寧な言葉で尋ねた。
「笹きりの笹は、漢方薬で使うクマ笹を使うので、コストが高くなりすぎますから、打ってないのです」
僕の笹きりへの憧れはあっさり潰えた……。
 そば吉のご主人林俊行さんは、毎朝、早くからその日の蕎麦を打つ。今は6種類の蕎麦を打つという。変わり蕎麦2種、多賀そば、細打ち(温かい蕎麦用)、細打ち(冷たい蕎麦用)、太打ちである。変わり蕎麦は好みに左右されるので、商いを考えれば一般的に好まれる柚子、茶、芥子などになるのだという。
 さて…多賀町産の新蕎麦は12月になってからということだ。
冬は、地元の新蕎麦と変わり蕎麦、「二色天盛りの大盛り」。変わり蕎麦は更級粉だけで打った「白雪」だったらいい。潔さを感じる蕎麦である。名残の紅葉がきっと綺麗なことだろう……。

手打そば  そば吉

滋賀県犬上郡多賀町多賀1615-1 / TEL: 0749-48-1477
営業時間 11:30〜19:30 / 金曜日定休

やや黒っぽく香りの強い太打ち(650円・大盛り800円)/ 口当たりのなめらかな細打ち(650円・大盛り800円)/ 柚子や芥子を練りこんだ変わり蕎麦(100円増)/ 他

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

小太郎

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