福田屋のスペシャル

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 木之本町 2009年7月26日更新

JR木ノ本駅前の福田屋

 JR木ノ本駅前の「福田屋」は、創業から70年以上続く老舗の食事処である。店の前にある大きな柳の古木が目印で、土間を改装した店内の落ち着いた雰囲気や裏口から馴染みが来店する様子は、今も昔も相変わらずである。
 現在、3代目となる福田和夫さん(58)と眞千子さん(58)がお店を切り盛りしている。
 メニューの中でひと品、異彩を放つ名前がつけられているものがある。「スペシャルそば」というそれは、一見、焼そばのようなのなのだが、文字通り、特別メニュー「スペシャル」なのだ。

 まず、麺が違う。それを独特の甘辛いソースで味付けし、大量のモヤシと刻み海苔、ネギがトッピングされている。焼そばよりモチモチした麺の食感とシャキシャキとしたモヤシの歯ごたえが新鮮である。福田さんご夫婦にお話を伺った。
 「麺はラーメンを使っているんです。4年くらい前、お客さんから『かしわ炒めのソースに麺を入れた料理が食べたい』と要望があったので作ってみたところ、好評だったのでメニューに加えました。今では若い世代を中心に人気で、何度も注文される人もおられます」。
 眞千子さんよると福田屋ではかしわ、つまり鶏肉料理には、伝統的に「ひね」と呼ばれる年を経た鶏を使ってきたそうだ。昔からの人気メニューとしてあり、常連には定番の味である。21世紀になった今、それを和夫さんがアレンジしたのが「スペシャルそば」なのである。

文字通りの「スペシャルそば」

 「メニュー名はお客さんがつけてくれました。ひねを使う伝統の料理から生まれた、新しくて懐かしい感じの味です。これが、気ままな木之本らしいのかもしれませんね」。
 和夫さんがそう言っておられた。このメニューには木之本の特別という意味が込められているのだと直感した。
 ところで、福田屋にはもうひとつ木之本のスペシャルと呼べるものがある。それはお店の前にある柳の古木だ。
 もともと、大きな柳の下にお地蔵様を祀ったことが木之本という地名の由来であるといわれており、木之本と柳は深い関係にある。改修される以前の北国街道には、道の真ん中に柳が等間隔に植えられていたと聞いたことがある。木ノ本駅前も、以前は歩道に沿って柳が植えられていたのだが、老朽化による倒木や駅前ロータリーの拡張工事にあたり、撤去されることになったという。幼い頃から柳のある景色に親しんできた和夫さんは、なんとか残せないかと考え、お店の前の一本だけそのまま保存されることになったのだそうだ。
 木之本の原風景を受け継ぐ福田屋。夏場、風通しをよくするために開け放たれた裏口は、そのまま狭い路地につながっている。扇風機が忙しく回り、冷えた麦茶で喉の熱を冷ますひと時には、伝統のスペシャルがよく似合う。

福田屋

滋賀県木之本町木之本1548-1
TEL: 0749-82-2024
営業時間 10:00〜14:00 / 16:00〜
定休日: 不定休

スペシャルそば 550円 / 焼そば 550円 / ラーメン 550円 / うどん 400円 / 鍋焼きうどん 650円など

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

水源

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