ホラアナから響く音

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2016年9月5日更新

 約150年前、江戸時代後期の建築とされるその古民家は、入母屋造で、トタン屋根の下に草屋根を隠している。当時の農家の面影をよく残すとして、彦根市指定文化財にもなっているこの建物に、青柳亮さん・麻美さん夫妻は昨年10月、神奈川県から移り住んだ。そして工房とショールーム「horaana」をかまえ、オーディオメーカー「HORA AUDIO」を営んでいる。
 玄関を入ると広い土間。ショールームの座敷は床の張り替えなど最低限の改装しかしていないというが、大量のレコードや本棚が並ぶ棚、現代的なデザインの家具が調和し、そんなにも古い民家であることを忘れそうになる空間だ。

 そして、ふしぎな形の小さな木製のスピーカーが一対。それらと少し離れて対峙するように、椅子が一脚置かれていた。麻美さんにすすめられるままその椅子に腰かけ、スピーカーと向かい合う。
 「なにが聴きたいですか?」と問われても、大量のレコードに呆然とする私に代わって、亮さんはRCサクセションのLP版を選び、「トランジスタ・ラジオ」をかけてくれた。
 イントロが流れ出した瞬間、「あれっ」と思った。続いてホーンセクションが重なると、そこにホーンが鳴っている、という実体感のある音の鮮やかさにはっとした。そして清志郎が歌い出す…ぞくっときた。今まで何度となく聴いていた「トランジスタ・ラジオ」がもっと素敵な曲に聞こえた。うれしい発見と同時に、スピーカーがこんなにも音の印象を変えてしまうことに驚いた。

 亮さんが設計し、手づくりしているこのスピーカーの名まえは、「MONO」という。「バックロード・ホーン」という、亮さんいわく「前時代的な」仕組みののスピーカーだ。信号から音に変える「振動板」と、低音を響かせる「ホーン」のみのシンプルな構造。しかし小さな「MONO」のなかに折り畳んで内蔵されているホーン部分は130センチ以上もあるという。低音を電気で制御するスピーカーが主流の現代、あまりに手の込んだこのスタイルのスピーカーはほとんど生産されていない。
 もともと音楽が好きで、家具や木工の仕事に長く携わっていた亮さんだが、楽器のように木の響きや構造だけで音を調整するバックロード・ホーンに興味を持ち、自作してみたのだという。「つくってみたら、今まで聴いたことのない新しい音がした。最初は製品としてはまだまだだったけれど、今まで聴いていた音は、電気で制御されることでなにかが失われていたんだということに気づきました」。それから試行錯誤し、「MONO」の完成に至った。

 ちょうどその頃引越すことになり、もともと関西出身のふたりは滋賀へ物件見学に。建物はもちろん、文化が根付いた土地柄、静かで地元の食べ物が豊富な環境が、一度で気に入ったという。「昔の人のものづくりのすごさを感じるし、住みながら改装したら自分のものづくりにもなにか影響が生まれるかも」という予感もあり、移住が決まった。
 「偶然なんですけど、MONOの形が入母屋造に似てるんですよね…」という亮さんは、今日もおくどさんのある工房で、手を動かしているだろう。

HORA AUDIOショールーム horaana

滋賀県彦根市肥田町400
TEL: 0749-43-3090
営業日 土・日・祝(ウェブにてカレンダーをご確認ください)/ 月・水(予約制:電話かメールにて要事前予約)
営業時間 11:00〜18:00
http://www.hora-audio.jp

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

はま

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