あしもとにある恵み

山のごはん よもぎ

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 米原市 2015年9月28日更新

 谷すじは、日が落ちるのが早い。刻々と日が傾いてゆく奥伊吹の山あいの道を、夕暮れに追われるように車で登っていく。刈り取りの始まった棚田、その端に建てられた古びた小屋に目を奪われた。
 甲津原の集落に入ると、澄んだ水が流れる水路で、ミョウガをざぶざぶ洗っているひとがいた。鮮やかな紅色が山盛りになっていて、なんだか良い予感がした。
 そんな集落のなかに「山のごはん よもぎ」はある。車の扉を開けた途端、よもぎの匂いが漂った。原っぱによもぎが自生している。香りを吸い込み、古い民家の軒先に吊られたのれんをくぐると、上野華江さんが出迎えてくれた。

 「山のごはん よもぎ」は、季節に合わせた薬膳料理を出してくれるごはん屋さんだ。薬膳と聞くと、漢方薬のような味を連想するかもしれない。しかし上野さんがつくる薬膳料理には、そうした薬くささはない。また、きれいに手入れされた古民家の空間のなかで、前菜、おばんざい盛、メイン、ご飯・汁物・香物、デザートと順番に出てくる料理は盛り付けも美しく、ぜいたくな気持ちになれる。ひとつひとつ、素材の味が生かされた、滋味ぶかい味わいだ。
 「生薬や漢方薬、手に入りにくい特別な食材ではなく、一般でも手に入る無農薬野菜や厳選された食材をつかいます。食材自体に効能があるので、その効能を組み合わせてバランスをとって、体を整えるのが、『よもぎ』で出している薬膳料理です」と上野さんは話す。

 一ヶ月ごとを基本に、気候の移り変わりによって変わっていく献立は、その時期に疲れやすい臓器の働きを補うことを中心に組み立てられる。私が伺った9月なかばは、空気が乾燥しはじめる時期で、五臓では肺の機能が活発になるという。肺を潤し、体の津液(体の中の栄養分もふくむ水分)を補う、梨、長芋、蓮根、豆腐などの「白い食材」が配された献立だった。
 上野さんにとって、薬膳の魅力は、「おおらかなところと、細やかなところ」。自然志向の食事をきわめていくと、肉や火を禁じたりと「だめなこと」にぶつかることが多いが、薬膳ではそうしたことは少なく、それぞれ食材の効用と組み合わせを重視する。「この考えをご家庭でも取り入れていただければ、それぞれの体の状態にあった細やかな施膳をすることができるので、家族がもっと深く健康になれる」という。

 上野さんはお隣の岐阜県垂井で8年ほど「うららか」というごはん屋さんを営んだのち、昨年、この甲津原へ移住。もともと奥伊吹の自然は好きだったが、慣れない雪も心配で、最初、甲津原は移住先として考えていなかったそうだ。けれども山を越えて見えてきた甲津原の棚田や姉川の美しさを目にして「雪に負けずに頑張ろう」と思ったという。
 「よもぎは、すごく効能がある薬草でありながらどこにでもある、足許にある恵み。そんな恵みに気づいてもらえれば」上野さんのごはんをお腹いっぱい頂いたあと、そんな言葉が心に残った。

山のごはん よもぎ

滋賀県米原市甲津原452 / TEL: 0749-59-0013
営業日 毎週金曜、土曜 / 営業時間 11:30〜17:00

ランチ予約制、2160円、限定10食 / 14時からのティータイムは予約不要 / お弁当、ケイタリングも20名様からご予算・ご要望に応じて承ります。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

はま

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