生まれ変わった精米倉

豊郷発酵倉

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 豊郷町 2015年5月15日更新

 先日、豊郷町の老舗酒蔵「岡村本家」が昨年4月にオープンした「豊郷発酵倉」を訪れた。築90年の精米倉を改装したレストランで、お酒はもちろん、酒粕や塩麹などを使った料理やデザートなどが楽しめる。豊郷発酵倉は正式には「第十二番倉庫 豊郷発酵倉」という。岡村本家に全部で12あるうちの12番目の倉庫なのだそうだ。
 岡村本家6代目の岡村博之さんは、2000年に発足した「とよさとまちづくり委員会」のメンバーとして、滋賀県立大学の学生たちとともに古民家や蔵の保存・再活用に取り組んできた。今回の12番倉庫の改築もできるだけ昔のものを残し活用したいという岡村さんの思いからはじまったものだ。
 岡村さんが小さい頃にはまだ稼働していたという精米倉は、その後、別の場所で精米を行うようになったため使われなくなり、以降はそのままになっていた。傷みが激しく、改築には解体の10倍の費用がかかると大工さんに言われたが、岡村さんはそれでも改築を選んだ。そして、昨年、創業160年の節目にオープンを迎えた。

岡村博之さん(左)と店長の上床美加子さん

 もともと倉庫だっただけあって、広々とした店内。奥は、個室に仕切られており、そこに巨大な精米機が当時のままの姿で鎮座している。また、2階は広間になっていて、団体での利用も可能だ。
 メニューは、発酵倉の名前の通り酒粕や味噌などの発酵食品を中心としたものになっている。ランチは塩こうじ味・酒かす味・みそ味から選べる魚や肉の料理に、地元の野菜を使った天ぷらや一品、味噌汁、十六穀米のご飯のセット。デザートには、店長の上床美加子さんが考案した酒かすチーズケーキや塩こうじのクリームブリュレなど酒蔵ならではのメニューが用意されている。また、1500円から3000円のコース料理も可能だ(3日前までに要予約)。 「酒蔵でできる発酵食品と地元の食材を使った料理」と聞くと、とてもプレミアムなイメージがあるけれど、岡村さんからするとそれは昔なら当たり前のことだったのだという。昔の人はお酒の副産物である酒粕などを無駄にならないように工夫して上手に使ってきた。流通が発達する前は当然のことながら地元の米や野菜を食べてきた。便利な世の中になって、現代の生活が行きすぎてしまったにすぎない。だから、少しでも「昔に戻す」ようにというのが、豊郷発酵倉のコンセプトだ。岡村さんの古民家活用の活動もその延長線上にある。
 確かに僕らの生活は、いろんなものから遠く離れすぎてしまったのかもしれない。そんなことを考えながら豊郷発酵倉の美味しいご飯を食べていると、少し僕の体も「地に足がついてきた」ような気がした。

豊郷発酵倉

滋賀県犬上郡豊郷町吉田100
TEL: 090-5247-5414
営業時間 11:00〜15:00(14:30 L.O.) / 定休日なし

さけランチ 850円、さばランチ 850円、とりランチ 850円、ぶたランチ 900円、牛ランチ 1,000円(それぞれ塩こうじ味・酒かす味・みそ味が選べる)
酒かすチーズケーキ 400円、塩こうじのクリームブリュレ 400円など

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

はじめ

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