機械メーカーがこだわった、とろろ昆布

厚さ0.02ミリの「大老昆布」

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2009年3月8日更新

 最近、幕末を舞台にした映画や小説を意識してみるようにしている。NHK大河ドラマ第一作目となった『花の生涯』、司馬遼太郎の短編小説『幕末』、三船敏郎が主演した映画『侍』……いろんな角度から井伊直弼が描写されているのが面白い。どれが正しい解釈ということはなく、様々な大老像から見えてくるものもある。だからかもしれないが「大老」という文字に敏感に反応する。
 江戸時代、彦根城の最も外側にある堀として機能していた芹川右岸の河口近くに「大老昆布」と書かれた大きな看板があった。
 看板の矢印を頼りにお店を訪ねてみた。「大老昆布」は、国内唯一の昆布加工機メーカー明和を母体にした、とろろ昆布のブランドである。海がない彦根で、実は20年近くとろろ昆布が作られていたのだ。

 代表取締役の正木喜八郎さん(68)にお話をうかがった。
 「元々、昆布食品を扱っている全国の業者さんを相手に、大阪で加工する機械の開発製造をしていたのですが、縁あって35年ほど前に彦根に移ってきました」。
 昆布加工機に関しては老舗中の老舗で、特に、とろろ昆布を削りだす工程においては、今でも業界の9割以上が明和製の機器を使用しているそうだ。つまり、普段、僕たちが口にするとろろ昆布は、彦根の企業なしでは存在しえないということになる。
 昆布を扱う加工業者から市場のニーズに応えるための様々なリクエストがある。常に機械の開発を進めるなかで、製品の試運転を兼ねて社内でもとろろ昆布を作ることにしたのだという。
 「せっかく作るのなら、スーパーで売っているのとは一味違う、機械屋としてこだわりぬいた一品にしようと考えました。口の中でとろけるような食感を出すために、一枚の厚さを0.02㎜で揃えています。温かいご飯に乗せると美味しいですよ」。

 商品は、店頭でしか販売されていない。特に広告もされていないので、知る人ぞ知る彦根のとろろ昆布なのだが、それでも、口コミで噂が広がり、全国から注文の電話が入るという。

 「大老昆布」の屋号は、彦根にちなんで名付けられたもので、パッケージには束帯姿の大老がシルエットで描かれている。正木さんの奥さんがデザインしたものだそうだ。その大老像から見えてきたのは、洗練された技術と機械メーカーのこだわりである。
 井伊直弼が桜田門外の変で討たれたのが3月3日。そして今、彦根では「井伊直弼と開国150年祭」が開催されている。この時機だからこそ、厚さ0.02mmの「大老昆布」を味あわずにはいられない。

大老昆布

滋賀県彦根市中藪2丁目5-8
TEL: 0749-23-3939 / FAX: 0749-26-2786

太白とろろ(紙包装)700円、太白とろろ(容器)1,370円、黒糖寒天こんぶ770円など。贈答品として各種セット 2,200円〜

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

木屋凧

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