月の移りかわり

半月舎

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2014年5月2日更新

 「引越しします」というハガキが届いた。ハガキには、雲の上に正座して本を読んでいるひとの絵が描かれている。「旧店舗から徒歩5分」と解説がある。彦根の古本屋「半月舎」の移転のお知らせだった。
 半月舎は、2011年9月に、古本とデザインをあつかうお店としてオープンした。約2年半、彦根市京町交差点の近くで営んだが、店舗の建物が売却されることとなり、引越しすることとなったという。4月7日、満ちていく半月の日にリニューアル・オープンした。
 古本屋として、移転前と一番大きく変わったのは、店頭に並べた本の量だ。移転に際して在庫を整頓し、以前の5倍近い3000冊を店頭に並べた。店の広さは狭くなったが、以前からのお客さんは、「広くなったね」と言うひとが多いという。「冊数が増えたので、見ごたえが増したのかなあと思います。そういう意味では、以前よりも本屋らしくなってきたかもしれません」と、古本を担当する御子柴泰子さん。確かに、古本屋にしては明るい空間。店内にはたくさんの花が飾られ、ところどころに絵や置物が置かれ、一見何の店なのか、ちょっとわからない。

 ところで、古本屋には特定のジャンルに特化する店が少なくない。それが店の強みとなるし、古本好きの間での知名度も上がりやすいからだ。「得意なジャンルは何?ってよく訊かれますが、うちの本はほとんどがお客さんからの買取。だからいろんな本があります」そもそも古本を始めた理由のひとつは、昔ながらの『まちの古本屋』が彦根にないことだった。「本に思い入れのある人は多いけれど、本を手放そうとするときの選択肢はとても少ない。その選択肢のひとつになることが『町の古本屋』の役目かなあと思って。それが原点なので、今のところジャンル特化の予定はないです」という。
 2年半の間に増えたのは、古本の蔵書だけではない。店内には、半月舎で編集・発行した小冊子や、半月舎の独自レーベル「半月盤」から発売したCD、愛東産菜種油や滋賀県産の材料を使ったシリアルバーなど、デザイン担当の上川七菜さんがかかわった商品なども並ぶ。デザインを依頼しにたずねて来るひと、商品を買いにくるひと、古本以外にも新しいひとの流れが生まれている。

 半月舎お引っ越し企画として、「かえるさん」こと滋賀県立大学教授・細馬宏通さんのライブとサイン会「本からはじまる物語」というイベントを開催。今後も、本を持ち寄って語り合うブックトークや朗読会など、本を通してコミュニケーションが生まれるような会を継続して企画していくという。
 実は、「引越しします」というハガキに描かれている雲は、次なる展開のひそかな予告でもあるそうだ。雲に乗って月が引っ越したことを意味するのかと思ったが、それだけではないらしい。雲と本…どんなことが起きるのか、楽しみに待ってみよう。

半月舎

滋賀県彦根市中央町2-29
TEL: 090-7969-2730(上川)
営業時間 12:00〜19:00 / 水曜定休

買取可能。値付けには数日かかることがある。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

編集部

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