彦根出身のヴァイオリニスト
被災木ヴァイオリンに想いをのせて

足木かよさん

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2013年3月12日更新

ヴァイオリニスト 足木かよさん


 東日本大震災から明日で2年になる。あの日多くの人が抱いた悲しみやむなしさ、「何かしなければ」という想いはどれだけ実を結び、どれだけ今に受け継がれているのだろう……。
 この震災は皮肉にも被災地から遠く離れた土地に住む私たちにとって、東北各地の地名を知る機会となった。陸前高田もその代表的なものではないだろうか。「奇跡の一本松」は今や陸前高田のみならず被災地の象徴となった。約7万本の松林の中からたった1本残ったその木は、塩害で枯れてしまった後も多くの人の力によりモニュメントとして再びその地に立っている。
 そして流された木々の中にもヴァイオリンとして新たな命を吹き込まれたものがある。ヴァイオリン・プロジェクト「千の音色でつなぐ絆」が、被災地の過去の記憶が刻まれた木を弦楽器にし、1000人の奏者が弾きつなぐ活動を行っているのだ。昨年3月に1台目のヴァイオリンが完成し、現在3台のヴァイオリンが国内24都道府県と海外6カ国で約130人の奏者に奏でられている。
 そして今月23日には滋賀県で初めてこのヴァイオリンによるコンサートが開かれることになった。主催するのは県内の教師らで作る「東日本大震災復興を応援する滋賀有志の会」。震災直後の一昨年4月より東北に想いをはせつつ自分の生き方を見直す時間をと、チャリティー講演会を開く活動を続けている。
 今回の演奏会では4人のヴァイオリニストが1台のヴァイオリンをリレーして演奏するのだが、その1人が彦根市在住の足木かよさん(24)である。足木さんはこの春愛知県立芸術大学の大学院を卒業し、フリーのヴァイオリニストとして彦根市中藪でヴァイオリン教室を本格的に始める。地元の人たちにヴァイオリンやクラシックを少しでも身近に感じてもらいたいと、先日開かれた彦根出身の若手音楽家たちが年に一度地元に集結し行う演奏会では運営にも積極的に関わった。今回の出演も、それが縁で依頼されたのだそうだ。
 普段の演奏会ではそれぞれの奏者が自分の相棒である楽器を奏でる。今回のように1台の楽器を出演者が順に奏でるということは珍しいため足木さんも少し緊張の様子だ。ただ、ヴァイオリンは楽器の中でも寿命がとても長く、時間を経ることで木が乾燥してよく響くようになるため、むしろ古い楽器ほど重宝されるそうだ。名器ストラディヴァリウスなどは1700年頃に制作されてから300年以上現役である。そのため1台の楽器が奏者から奏者へと受け継がれていくことは他の楽器に比べて多い。音を響かせることで楽器も育つのだそうで、どんな奏者がどのようにその楽器を奏でたかによっても楽器の味わいが変わってくるのだという。
 ヴァイオリン・プロジェクトを通して短時間ずつではあるが、イヴリー・ギトリスや宮本笑里ら130人が弾きつないできたヴァイオリンと足木さんが対面するのは演奏会当日。「緊張しますが、どんな音色なのか自分の耳元で聞くのが楽しみです。鎮魂の想いをこめて演奏をしたいと思います」と足木さんは語ってくれた。

 

千の音色でつなぐ絆ヴァイオリンコンサート・講演会

日時 2013年3月23日(土)13:00開場・13:30開演
第1部 ヴァイオリンコンサート「千の音色でつなぐ絆」
   奏者:川島泉、足木かよ、川下晏子、島越春華
第2部 講演「人生二度なし~災い転じて福となす~」
   講師:又川俊三(「命をつなぐ木霊の会」会長)
会場 ピアザ淡海(大津市、JR膳所駅より徒歩12分)
参加費 前売1,000円(当日1,500円)大学生以下は前売500円(当日700円)

参加にはお申し込みが必要です。
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FAX: 0748-22-5558

お問い合わせ
「東日本大震災復興を応援する滋賀有志の会」実行委員会
tel.070-5653-4017(北村)

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

れん

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