描くことの始まりは案外身近なところにあるのかもしれない

松居清恵さん 直子さん

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2010年3月15日更新

松居清恵さん 直子さん夫妻

 まちなかを歩いていると、スケッチブック片手に風景を描く人に出会うことがある。彦根にお住まいの松居清恵(きよしげ)さんも、まちの風景をスケッチするひとりだ。3月14日から、日本画を学ぶ妻の直子さんと初めて夫婦二人展を開くことになっている。開催に先駆けて、清恵さんのスケッチブックを覗かせていただいた。
 清恵さんはデザイン系の学校を卒業して以来、グラフィックデザインの仕事に携わり、昨年市内の印刷会社を退職された。スケッチに夢中になりだしたのは4年ほど前のことだ。これまでに描き溜めた何冊ものスケッチブックには彦根をはじめ各地の街道、単身赴任していた東京の風景などが閉じ込められている。

清恵さんの作品

 1枚のスケッチに目が止まった。彦根市内の何気ない路地の風景だが、電信柱と電線がとても丁寧に描きこまれている。「私が描きたいのは、単なる景色ではなくまちの営み。山や川は自然が作ったものですが、まちは人が作ったものです。だから歩いている人や電信柱、標識もそのまま描くようにしているんです」と松居さんは教えてくださった。
 今回、清恵さんは個展用に、手づくりのスケッチ解説を用意している。スケッチした場所の地図と写真とコメントを載せたものだ。現地の写真があることでカメラと人間の目線の違いを伝えたいというのが清恵さんの意図だ。「この風景はこんなアングルで描きましたと、おすすめのスポットや構図のとらえ方をも紹介することで、絵筆を取っていただく人が増えるきっかけとなればと考えています」。
 なにげない風景でも構図ひとつでその絵がいきいきとしてくる。商業デザインに長く関わってきた清恵さんならではのセンスである。

直子さんの作品

 日本画歴17年の直子さんは、日々の家事などの合間を縫ってこつこつと制作を続けてきた。モチーフは野菜や植物、家で飼っている猫など身近なものばかりだ。お二人は、題材は身の回りにいくらでもあり、描くことはそんなに難しくないという。
 「家々の間からお城が見える彦根の風景が好きでね……」という松居さんの言葉に、私はカメラのシャッターを押す。同じ行為のように思うのだが、そこには大きな隔たりがあるような気がしている。
 春は何かを新しく始めたい季節。柔らかい陽気に誘われて、カメラとスケッチブックを片手にまちを歩く。そうすれば、解る新しい何かがあるだろうと期待している。描くことの始まりは案外身近なところにあるのだから。

松居清恵・直子二人展

2010年3月14日(日)〜4月6日(火) 10:00〜17:00
醒井水の宿駅2階 ヒロヤマガタ湧水ギャラリー

醒井水の宿駅
滋賀県米原市醒井688-10 / TEL: 0749-54-8222

お問い合わせ
松居清恵さん・直子さん
滋賀県彦根市栄町2-2-16 / TEL: 0749-22-5348

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

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