虎の威を借りずキツイねー

「楽しく生きるヒント 創作ことわざ集 」大林和夫さん

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 東近江市 2009年12月15日更新

『楽しく生きるヒント 創作ことわざ集』

 編集部に一冊の本が届いた。
『楽しく生きるヒント 創作ことわざ集』(文芸社)というタイトルだった。古来より伝わる故事・諺(ことわざ)が現代社会に合わなくなっているのと、使われることが少なくなっているため、出来る限りオリジナルに近く、解釈を現代風に置き換えアレンジしたもの、181編がおさめられている。独特の笑いと風刺、シニカルな逆説など「味わう」という言葉が相応しい内容だ。
 例えば、僕のお気に入りを挙げるならば『まず豆腐』だ。元の故事は『馬耳東風(他人の忠言や批評などに注意を払わず聞き流し、そ知らぬ顔をしていることのたとえ)』。馬耳東風から、まず豆腐を思いつくところがスゴイ! そして、著者の付与した意味や解説が爽やかなのである。
『まず豆腐』の意味は、『自分の心を癒せる小さな幸せを見つけること』。その他、『猫にご飯』『うちの大木』など……、ニヤリと笑って納得する。著者大林和夫さん(59歳)に会ってみたいと思った。俳優の藤岡弘に似ていると聞いていたが、僕は藤岡弘の顔を思い出せずにいた……。

大林和夫さん

 12月、陽が差しているのに細かな雨が降った午後、大林さんにお会いすることができた。藤岡弘が仮面ライダー一号の人だと記憶が結びつき、気持ちが落ち着いた。
 出版のきっかけは、「20年程前から、中国の故事・諺が好きで、その種の本を読みあさっていました。特に、守屋洋さんの書かれた『戦国策』は名著で、深く感銘を受け、今も愛読しています。2007年にリストラに合い、しばらく時間ができたので、興味があった故事や諺の出版を考えました」。奥様も「それなら、やってみたら」と、後押ししてくれたのが、有り難かったという。
 書き溜めていた原稿を整理し書き加え、出版社に持ち込み、「面白いのではないか」という評価を受けたが出版には至らなかった。アドバイスを受け、構成を変え書き直しカタチとなった。
 大林さんの一番のお気に入りは『生え際』。元の故事は『生え抜き』。意味は『人それぞれ立場が違うこと』をいう。
 僕は、大林さんに一つお願いをした。
「新年も近いので、「虎」のつく故事で何か新しいものを創っていただけませんか」
「わかりました考えてみましょう……」
その夜には、メールが入った。
それが『虎の威を借りずキツイねー』である。元の故事は、『虎の威を借る狐』。
 弱い人間だけれど、力有る者に頼らず、キツイ人生になっても自分の力で生きて行くことをいう。以下がその解説である。
『よく威張り散らしたり、力を見せ付けたりする人って意外と多くいますよね。でも、劣勢になると、後ろ盾の名を出したり、頼んだりして自分があたかも力があると思い込んでしまい、勘違いしている。
同じ人生なら、一度くらい小さな力でもいいから、自分一人で生きていこうよ。この積み重ねが、何れ大きな力に生まれ変わるはず。
来年はトラ年、ずる賢い狐にならず、小さな力でも、虎のようにたくましく人に頼られる年にしたいものです』。
 実は、大林さんには、大いなる野望がある。芥川賞である。その作品も完成している。タイトルは夏目漱石の『ぼっちゃん』に倣って『おっちゃん』。タイトルがどうしてもダジャレになってしまうのが、大林さんらしいところなのだろう。しかし、内容は真剣に取り組んだものだという。
「無名の人間がいきなり出版するよりはと思い、まず、一冊出版し、それからと考えています」。
『おっちゃん』の出版が楽しみである。

楽しく生きるヒント 創作ことわざ集

著者: 大林和夫
出版社: 文芸社
価格: 1,260円(本体1,200円+税)
2009年4月 / 判型 B6
ISBN978-4-286-06520-5

お問い合わせ

滋賀県東近江市東沖野3-4-13
TEL: 090-2018-2527(大林)

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

小太郎

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