それぞれの今を鳴らす

岡田兄弟

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 米原市 2017年4月3日更新

 「岡田兄弟」の所属する「岡田音楽事務所」は、伊吹山のふもと、米原市村居田という集落にある。まわりには田んぼが広がり、野山が近く、夏にはホタルが舞う。「音楽事務所」という言葉が不似合いに思える、そののどかな風景のなかで岡田兄弟は生まれ育ち、それぞれ、歌を歌い、演奏活動をし、音楽教室などを開きながら暮らしている。
 岡田兄弟は、長男・健太郎さん、次男・和宏さん、三男・通利さんの三兄弟。お母さんが音楽大学の声楽科出身で、お父さんも地元の合唱サークルに所属していたという岡田家では、「晩ごはんを食べた後、お母さんの弾くピアノに合わせて童謡を歌ったり、ほのぼのやっていたんですよ」と健太郎さんは話す。歌うことが一家団らんの一コマだった兄弟たちは、のびのびと音楽に触れて育ったのだろう。健太郎さんが小学5年で全国童謡歌唱コンクールの子ども部門で優勝し、その3年後には一家で出場した同コンクールのファミリー部門でも優勝するなども経て、それぞれ自然と歌うことを選んでいった。高校生になるとクラシック音楽の基礎を学び、三人とも音大の声楽科に進んだと、こともなげに言うので驚く。
 高校生の頃から作詞作曲を始め、ポップス音楽もやっていた健太郎さんの誘いで、2001年頃から健太郎さんと和宏さんはボーカルユニット「Family~おかだ兄弟~」として活動するようになる。やがて東京に拠点を移し、2006年にはドラマ挿入歌となった曲「矢印」でデビューした。東京のライブハウスで地道に音楽活動をする傍ら、関西圏でも滋賀を中心に学校公演などを展開。2007年からは地元に拠点を戻し、岡田音楽事務所を開く。この頃からバリトン歌手でカホン奏者でもある通利さんも参加して、三兄弟で活動するようになった。しかし2009年、活動を休止することになる。
 それからは、健太郎さんはピアノ弾き語りによるソロ活動を始めたり、通利さんは演奏機会に参加したり、それぞれ音楽教室を開くなど、おのおののペースで音楽活動を続けてきた。活動を休止する前について和宏さんは、「三人それぞれのやりたい音楽が今いちわからず、おもしろくなくなってきてしまっていたんだと思う」と振り返る。それぞれが独立して音楽活動を続けて6年が経った頃、浅井文化ホールから、三兄弟でのライブをしないかと誘われたという。
 「できるかなあ」と思いながら音を合わせてみると、6年間にそれぞれがやってきたことがうまくかみ合い、アイデアを出し合いながらリハーサルを重ねるごとにどんどん曲が良くなっていき、「音楽をやり始めた頃の楽しさを思い出すようだった」という。「ひとりひとりの音楽活動が当たり前になったなかで、やりたいときに三人で集まろうという段階になれた」と通利さんは話す。そうして開かれた2015年7月浅井文化ホールでのライブをきっかけに、兄弟はまたともに演奏活動をするようになった。その記念すべきライブを収録したCD「流星音」も、昨年発行した。「流星音」は、ライブに合わせて和宏さんがつくった新曲の名まえだ。兄弟の声のアンサンブルに乗って疾走感のある旋律が駆け上がっていく、過去に思いを馳せながらもあかるく未来を鳴らしていくような曲だと思った。
 「6年間も時間を置いたけれど、一緒にやってみたらやっぱり『兄弟』で『家族』だった」という和宏さんの言葉が印象的だった。両親に教わり、家族で歌い、鳴らしながら覚えていった音楽を、それぞれの今を重ねながらまた鳴らすことは、この兄弟にとっては自然なことなのだろう。

岡田兄弟LIVE2015「流星音」

価格 2,000円(税込)

販売場所 佐々木文具店(米原市春照469)/ 半月舎(彦根市中央町2-29)

岡田音楽事務所

滋賀県米原市村居田892
TEL: 0749-55-3718

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

はま

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