揺りもどされる詩人

八男

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 長浜市 2016年3月18日更新

 「八男」という詩人に会ったのは、長浜の、とある喫茶店だった。八男は、この喫茶店に思い出があるという。八男と喫茶店は、詩をつうじ、引き寄せられるように出会ったのだ…。が、その経緯にまつわるお互いの記憶は、まったく違うものだった。
 「僕の記憶、ぜんぜん違いましたね」と八男は苦笑いしたが、どちらが本当でもかまわないと思うような物語だった。そしてそんな思い違いもなぜか、「詩」のようだと思った。
 そもそも詩とは、詩人とは、なんだろうか。
 八男と詩の出会いは幼少時。父親が趣味で詩を書いていた。「だから、親というものは詩を書くものだと、どこかで思っていたんですよね」という。やがて19歳の時、詩人と郵便配達夫の交流を描いた映画「イル・ポスティーノ」を観て、詩人をこころざすようになる。
 それから一年ほど後の夏、中国に留学していた八男は、電車で大陸を長旅していた。まったく進まない電車のなかで、いらだちをぶつけるように初めて書いたのが「自転車」という詩だった。この詩が滋賀県文学祭で賞を受賞し、翌年もべつの詩で受賞した。八男にとって詩は高尚なものではなく、庶民である自分が肌で感じていることが胸のなかであたたまり、高まり、ある時「ボンッ」と出るものだという。
 イベントに招かれたり、一年間毎週10本の詩を書いて朗読するライブを地元・山東町でおこなったりと精力的に活動していた時期もあるが、現在は年に数回の朗読ライブを主催する程度と言い、「こんなんで詩人って言えるんですかね」と、八男は何度か口にした。
 けれども、音楽やスタンダップコメディや、あるいは日々の仕事といった、べつのことをしていても、不思議と詩人に揺り戻されてしまうのだという。40歳を迎える今年、声がかかったのが、日本を代表する詩人・谷川俊太郎の詩を朗読するイベント「俊読」だ。谷川氏のほか、気鋭の詩人、俳優なども同じ舞台に立つ。
 「自分が何者かわからずいろいろやってきたけれど、節目節目で詩人として立たせてもらう機会をもらって、やっぱり『詩人をやれよ』って言われてるような気がしてる」。
 詩の会などに属さない八男の師匠は、大阪の漫談家・テントというひとだ。八男は、「テントさんは芸人の皮をかぶった詩人だ」と思うのだという。「書くことだけでなくて、『これは詩なんじゃないか』という状況を感じるのも詩だと思う」。それならやっぱり、八男は詩人なんだろう。

八読(はちどく)

八男主催の朗読・音楽・ダンスのコラボレーション。

2016年3月26日(土)18:30開演
会場: voce ミュージックスクール・カルチャースクール(長浜市平方町238 ワイエフビル23 2F)
料金: 1,000円
お問い合わせ: 090-5243-5553

「俊読 2016」4月3日(日)19:30開演
東京都渋谷区神宮寺前6-18-8「クロコダイル」

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

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