古民家で聴く、ウィーン仕込みの歌声

中嶋俊晴さん

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2014年10月27日更新

 彦根市正法寺町出身、28歳の中嶋俊晴さんは、世界的にも希少な声種である「カウンターテナー」の歌手である。
 小学生からピアノを始め数々の賞を受賞したが、高校生の時ミュージカルに夢中になり、声楽へ転向。関西の名門京都市立芸術大学を卒業し、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程に入学。京都市芸術文化特別奨励者に選ばれたことで留学資金を得て、現在はウィーン国立音楽大学大学院で学んでいる。演奏家として国内でも活躍し、未来を嘱望されている。経歴を見ればまさに順風満帆だが、中嶋さん自身は否定する。

 世界から優秀な学生が集まる本場・ウィーンでももちろん苦労しているというが、意外だったのは「特に大学4年間は暗黒時代を送った」ということだ。あることをきっかけにテストの点数を意識した途端、スランプに陥り、声が出なくなってしまった。どんなに練習しても思うように歌えなくなってしまったという。それでもきっとなんとかなると自分の才能を信じていたが、ある日、尊敬する先生に雷を落とされた。「他人と比べた歌を歌ってどないすんの? 人より良くなりたいとか、良くみせたいとかいう負けず嫌いより、自分自身に負けたくないと思える、そんな負けず嫌いになりなさい」。それ以降、人との競争から自分が求める音楽を見つめ直したら自ずと出口が見えてきたという。大学卒業後にはスランプから脱し、演奏家としての道も開けてきた。
 将来の夢は? と訊くと、最終的には指導者だという。
「『暗黒時代』に自分を叱り、励ましてくれた三井ツヤ子先生は、はちゃめちゃでも個性を大切に、生徒を伸ばす名指導者。理想の教師像がはっきりとある以上、自分もそうしたものを残したい。指導者としてある程度のラインに立つためにも、留学を決めた」。

 カウンターテナー自体が教会音楽に端を発していることもあり、中嶋さんが演奏会で取り組む曲は、一般の聴衆には馴染みにくい曲がどうしても多くなる。「もちろん音楽として素晴らしいし僕は好きなんですが、宗教的な内容の歌やオペラのような、非現実感の強い世界観の歌ばかりが続いた時、少し窮屈に感じたんですよね」。また、まばゆいライトを浴びて広い音楽ホールで歌うと客席が見えず、暗闇に歌っているようで、違和感を感じることもあったという。
 もっと観客と近い場所で、いろんな歌を歌いたいと思っていた頃、京都の町家で演奏する機会を得た。親しみやすい曲を選んだ演奏や、一曲ごとまじえる紹介のトークなど、ひとつひとつに反応が返ってくることに喜びを感じた。それから毎年1回のペースで行い、昨年からは彦根市高宮町の蔵を改装した「座・楽庵 おとくら」でも開催し、シリーズ化している。トークでは爆笑が巻き起こるというから楽しみだ。プログラムには歌謡曲なども入っている。クラシック音楽の世界の最前線を見つめる中嶋さんが熱唱する歌謡曲……是非聴いてみたい。

優しい時間 Vol.2

彦根会場
2014年11月2日(日)14:00開演
座・楽庵 おとくら(彦根市高宮町1121)

京都会場
2014年11月3日(月・祝)14:00開演
三条猪熊 なかい(京都市中京区三条猪熊町645−1)

【料金】2,000円

チケットのご予約・お問い合わせ

担当:佐渡春菜
TEL: 080-2443-4719

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

はま

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