自分たちの「しゃぎり」を繋ぐために

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 米原市 2014年2月13日更新

 「しゃぎり」とは曳山まつりにおけるお囃子のことだ。曳山の巡行時や歌舞伎が始まる前には篠笛や摺鉦、締太鼓に長胴太鼓を用いて必ずしゃぎりが演奏される。毎年10月上旬に行われる米原曳山まつりでは、このしゃぎりを年齢や性別、居住地にかかわらず多くの人で奏でている。
 山組のひとつ松翁山は7年前「松翁山しゃぎり保存会」を立ち上げた。実はそれ以前の松翁山では長い間しゃぎりの担い手がおらず、録音テープを流していた。次第にもう一度生の演奏をという機運が高まり、現在の保存会会長である角田収さんやしゃぎり指導にあたる西村太志さんらが立ち上がったのが2007年のことだった。
 角田さんや西村さん自身、幼いころから祭で聞いていたのは録音音源。最初の頃は楽器の奏法すら手探りだったという。それでも、山組ごとに曲が微妙に違うため、自分たちの曲は自分たちで次の世代へ教えていきたいと、音楽経験のあった西村さんが音源を聞いて楽譜に起こし指導にあたるようになった。現在は小学生から大人まで男女合わせて30人ほどが月2回、米原公民館で練習を行っている。練習の成果は10月の祭はもちろん、声がかかれば結婚式や市内のお祭りなどにも出向き披露しているのだそうだ。

 祭が好きだという高校1年生の角田美也さんは保存会の発足時からのメンバー。今や子どもたちのリーダー的存在だ。「小さい頃から兄が曳山に登っているのを見てかっこいいなと思っていたので、しゃぎりで祭に参加出来て嬉しいです。大勢の前で出笛を一人で吹ききると達成感があります」と話す。
 確かに祭の中でも特に神事というものは、女性にとって行う側より観る側になる方が多い。観るだけでも十分心は躍るのだが、行う側を少し羨ましく感じる気持ちも少なからずある。伝統ある曳山まつりに参加出来ること、古典楽器に触れられること、世代の違う人と時間を共有できること、しゃぎりを通してそのような経験が出来ていることはとても羨ましい。
 実はもともとしゃぎりは大人が演奏していたのだそうだ。けれども松翁山ではあえて子どもたちを積極的にメンバーにしている。その想いを西村さんは「おじいさんから子どもまで、三世代一緒に出来るのが祭のいいところ。当日になれば大人はそれぞれの役職に就かなければならないのですが、子どもたちだけでも山組の一員としてしっかりしゃぎりを演奏してくれています。祭の中で楽しさを感じ育ってくれれば」と話してくれた。
 メンバーは随時募集中とのことである。見学も自由で、練習すれば誰でも祭に参加できるそうだ。気になる方は一度練習をのぞきに行ってはどうだろうか。

松翁山しゃぎり保存会

練習日: 日曜日19:00〜20:30(毎月2回開催)
場所: 米原公民館(米原市下多良3丁目3)
年会費: 3,000円

お問い合わせ 090-4567-1887(角田収)

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

青磁

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