天狗残滓 最終回

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 長浜市 東近江市 多賀町 2013年12月12日更新

 かつて、鬼と河童と共に日本三大妖怪と讃えられ、一世を風靡した天狗は、今、何処にいるのか。12月14日・15日に行われる彦根ゴーストツアーが契機となり、その残滓を探す「天狗残滓」の4回目はとりあえず最終回。今回は伝説や昔話に天狗の痕跡を探してみることにした。
 長浜市木之本町田部の観音堂に「天狗杉」と呼ばれる木がある。比叡山、石山寺、三井寺と県下には天狗杉が多くある。三井寺のそれは、相模坊というという僧が密教の修行をしていたとき一夜のうちに天狗となり、この老杉にしばらく住んでいたという。(『近江の伝説』)
 また、網谷の山奥の枝ぶりのよい松の木にも天狗の話が伝わる。(『きのもとのむかし話』)
 長浜市湖北町には「天狗にさらわれた子」「杉の鼻の天狗さん」の話がある。(『湖北町昔ばなし』)
 犬上郡多賀町南後谷には、今も天狗の岩と呼ばれる岩がある。山の柴を刈り燃料にしていた時代、そこには天狗がいるからと行くことを禁じられていたという。(『彦根妖怪図鑑』)
 愛知郡愛荘町東円堂には、東円堂城があったといわれ、釣瓶おとしや天狗が出没している。鼻の高い赤ら顔の天狗が、真照寺の欅にどこからともなく飛んできて村人に悪さをするという噂があったが、欅に降り立ち読経し麦播きを手伝ってくれる優しい天狗だったと物語は伝えている。また、東円堂城の東のはずれに巨大な榎があり、天狗の爪石が刺さっていたという。(『愛知川町の伝承・史話』)
 東近江市平尾町には、「平尾の天狗さん」という話が伝わっている。木村久右衛門という人が現れ、この人は一夜のうちに伊勢神宮に参拝し、翌朝には天照皇大神(てんしょうこうだいじん)のお札を受けて持ち帰り、財産家に配って回ったそうだ。(『昔ばなし 愛東町』)
 以上、思っていた数よりは少ないが、全国的にも有名な相模坊の存在を確認できたことは有意義だった。また、高島には「グヒンサン」という天狗がいるらしい。天狗残滓はまだまだ終わらないのである。

 

小太郎

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