マンボな話

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 米原市 2013年4月4日更新

大野木ワンダーランドのマンボ

 マンボである。先日、先輩からフェイスブック経由で問い合わせがあった。
  隧道の話題で気になることがありました。マンポという言葉をご存じでしょうか。昨年出版された『湖猫、波を奔る』(弟子吉治郎著 / サンライズ出版)という竹生島と湖北地区を舞台にした小説があります。前半部分で西野水道含め湖北の水利に関する記述がたくさんあり、その中に地元の人が「さっきはうっかりこの西野水道をトンネルと言いましたが、昔はここも西野マンポと言うとりましたな」という会話が出てきます。たぶんマンポは方言だと思いますが、この小説の中に「有名なのは京都の蹴上にあるねじりマンポだ」と出てきます。京都でも通用する言葉でしょうか。
 長い文章だったので、ところどころ省略したが、「マンポ」についてである。
 DADA431号で「マンボ」という聞きなれない言葉を見つけたという話をした。「マンポ」は「マンボ」ともいう。僕らは最初にそれに出会った時「ボ」だったので「マンボ」を使っている。大したこだわりとかではない。
 旧山東町の大野木地区(現・米原市)をたまたま訪ねたときのことだ。公民館の前に地域の名所などが記された「大野木ワンダーランド・マップ」の看板を見つけた。地区内の様々な史跡や神社、公共施設、企業などがイラスト地図の上に記してあり、その地図の左上あたり、古墳のような丘のような小高いもののイラストがある。丘はトンネル状に穴が空いていて、そこを川が流れている。横に「マンボ」と記してあったのである。「明治時代の遺構」と添え書きもある。魚類であるはずもない。相応しい漢字もなく、カタカナの固有名詞である。それが「分校跡」や「野神さん」などと同じように地図上に記されていた。
 そして僕らはマンボとは、「水路をひく際、途中に山や丘があって邪魔になるとき、そこにトンネルを掘ることになる。この水路のために掘られた横穴式のトンネルを『マンボ』といい、県内でも湖南地域には多く見られる。水路以外では使わない言葉らしく、広い意味では有名な西野水道(旧高月町西野)も「マンボ」と呼ぶことができる。ただ、何故、マンボというのか、確たる説は未だ無い」ということを知ったのである。大野木ワンダーランドの「マンボ」は旧伊吹町との境にあって、国道365号線の下を通っている。
 遺構となっている場所は石がアーチ上に積まれ、トンネルになっている。穴をくりぬいただけでなく、石積みのトンネルが築かれていた。明治から現代まで、当時のままの姿で、今も変わらず水を通し続けている近代化遺産の一つではないだろうか。
 さて、先輩の質問だが「京都でも通用する言葉かどうか」である。インターネットの中に落ちている情報を集めると、マンボは、人工的に昔作られた地下水路であり、近代的な土木技術以前に日本で独自に発達した技術によって作られた水路トンネルであり、愛知・三重・大阪・秋田・新潟・富山・鹿児島・滋賀・神奈川・長崎などにもあること、三重県立図書館では平成13年に「鈴鹿山脈東麓の扇状地性洪積台地にある地下水の取水施設であるマンボに関する関連資料の展示・紹介」が行われていたことが判った。
 ということは、もう少し専門的に調べてみないと判らないが、マンボは特定の時代と技術によって造られた水路トンネルのことだから、京都でも通用するはず、ということになる……。
 ふと、インターネットを駆使することもできる先輩が、何故、僕に、フェイスブック経由で質問してきたのかは謎めいている。『湖猫、波を奔る』を読んだか? という日常的問いかけなのか、忘れらたマンボを探せというミッションを婉曲に投げてきたのか。いずれにせよ先輩の企みは全く……、成功したのではないだろうか。

『湖猫、波を奔る』

弟子

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

編集部

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