妖精の暮らす街、八日市

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 東近江市 2013年2月13日更新

 昨夏のある夜、東近江市八日市の皇美麻(すめみま)公園に突如「妖精の木」が現れた。その木には人間の手のひらに載るほどの小さな妖精クヌートが宿り、彼を慕って小人や妖精たちが八日市のあちこちに引っ越してきてこっそり暮らし始めた。妖精自体は人間の目に映らないのだが、確かに商店街や保育園、図書館の片隅に妖精の家を示す小さな小さな「妖精の扉」が現れたのである。扉の前にお菓子や手紙を置くと妖精から返事がくることもあり、子どもたちの口コミでその注目度は上がっている。
 さて、この「妖精の扉」をとりまくワクワクするようなプロジェクトを企画運営しているのが、東近江市内のアーティストや保育士、市役所職員など有志8名で2012年2月に発足したアート探検隊「ピカソ・スイッチ」だ。

 きっかけはある時、町中の壁に味気なく子どもたちの絵が貼り出された“子ども絵画展”を見かけたことだったという。メンバーの木工作家・平尾智子さんはその状況を見て「子どもの作品を大人が蔑ろにしがち。子どもの可能性をちゃんと認識し美術作品として扱えば子どもも大人も感化され暮らしが豊かになるのに」と思った。その思いに共感したという代表の造形作家・中祖厚志さんは「子どもっぽい絵というものを大人が勝手に決めつけていると思うんです。そうすると子どもたちは表現する楽しさを知らないまま、大人に褒めてもらう絵ばかりを描いてしまいます。作品は人生を削って生まれているものだとすれば、大人に比べてまだ少ししか生きていない子どもたちの人生を削ってできた作品はもっと尊重すべきだと思う」と語る。この2人に加えて「いい絵って何だろう、いい絵を描かせるってどうしたらいいのだろう」と迷っていた保育士らが一緒になり、子どもたちが自由に表現する楽しさに出会える場、作りたいという気持ちを呼び起こすようなアートに触れる場、そしてそれぞれの作品を尊重できる場を作ろうと動き始めたのである。

 現在、様々な素材を使った造形教室や、公園全体をダンボールや明かりを使った作品で演出する参加型のアートイベント、幼稚園や保育園での美術指導のアドバイスなどの活動を八日市を中心に行っており、その一環として「妖精の扉」プロジェクトも、目に見えないものを想像したり感じることで新しい発想を生む力を養って欲しいという願いからスタートした。
 妖精の扉は現在市内約15箇所に出現しており、今後は東近江市内のすべての図書館にも妖精が引っ越してくる予定とのことだ。その裏方で夜な夜なこっそり奔走するプロジェクトメンバーの努力はあえてここには書かないが、扉の前に毎日のようにラブレターやお菓子が置かれ、「どうして私の家には妖精が来てくれないの?」という声が聞かれるようになるなど、着実にその輪は広がってきているようだ。今後は妖精の扉をあえて見つかりにくいように記した地図を使ったまちあるきも構想中だという。
 八日市ではもともと「八日市は妖怪地」として妖怪で地域を盛り上げてきた。妖怪と妖精、これからは一緒に手を取り合って(という表現が正しいのか分からないが)八日市を盛り上げて欲しいと思う。

アート探検隊「ピカソ・スイッチ」

電話:0748-24-2355(中祖)
詳しくはFacebookページ「アート探検隊“ピカソ・スイッチ”」をご覧ください。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

れん

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