狼少年映画ポスター展 2

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2012年11月12日更新

 狼少年は、映画と映画のポスターが大好きな僕の友人である。映画評論家蓮實重彦(はすみしげひこ)の「世界で年間300の映画が公開されている。300本観ないということは映画が君から遠のいていく」という言葉を信じ、300本観なくてはと思ったという。高知で映画と共に学生時代を生きた人である。映写技師のアルバイト、土曜日は映画の日と決めどっぷり浸かり、バイト代は東京で映画を観るために消えた。全共闘時代が終焉を告げ、ゴダールと吉本隆明を熱く語らなければならなかった時代だったと狼少年は振り返る。
 松田優作に「すみません」と言わせ、夏目雅子に「貴女にはまだ代表作がない。貴女で僕が『めぞん一刻』を撮ります。それがあなたの代表作となります」と本人を前にして言った。夏目さんはからからと笑っていたという。
 その狼少年の映画ポスター展が彦根・花しょうぶ通りの「逓信舍」2階で11月20日まで開催されている(入場無料)。
 逓信舍は、2011年、国の登録有形文化財となった旧川原町郵便局舎の建物だ。木造2階建ての伝統的な町家で、昭和9年(1934)に郵便局舎への転用にともない、建物の前面が洋風外観に改造され、2階にも天井高の高い居室が増築された。この郵便局舎部分を利用し、1階がカフェ、2階はギャラリー兼オフィスとなっている。
 展示されているポスターは24枚。全て額装され極めてマニアックである。フランス映画のスペインポスター、フランス映画のドイツポスター……、タイトルは知っていても初めて観るものばかりである。訪れた人々は、集められたカッコイイポスターにある種の心地よい知的な難解さを覚えるかもしれない……。
 ところで、ポスターはそのまま折り畳み保管するのが正当なコレクションの方法らしい。ところが狼少年はわざわざ額装する。紙質の悪いものは表具屋さんで裏打ちもする。ポスターとしての価値は失われ、正当なコレクターに言わせれば「なんてこと、ことするんやー」ということになる。マニア垂涎の価値を顧みることなく、或いは、1000円のポスターであっても、自分が気に入ったものは変わりない愛情をもって額装する。狼少年曰く……、「全く、阿呆ですわ」。コレクションの理由は様々だろうが、そのやり方は独自のものがあっていい。そこが狼少年のカッコイイところである。コレクションは何処か孤高の匂いがあるものだ。
 また、今回展示されているコレクションは、ポスターの背後に逸話があり、思い入れのあるものばかりである。それを知ることによって一枚のポスターが深味を帯び、狼少年の背景を知ることになる。ポスター全てに自身が記したキャプションが付けられているので、必読である。
 狼少年が誰かって?
11月20日にギャラリートークが予定されているので、気になる人は逓信舍を訪れるといい。深い映画の話をすることができるに違いない。

展示ポスター

「突然の炎のごとく」(原題Jules et Jim)/「ロリータ」(原題Lolita)/「死刑台のエレベーター」(原題Ascenseur pour l’échafaud)/「気狂いピエロ」(原題Pierrot Le Fou)/「あの夏、いちばん静かな海」/「軽蔑」(原題 Le Mépris)/「コンプリート・ビートルズ」(原題THE COMPLETE BEATLES)/「探偵物語(TV)」/「ストレンジャーザンパラダイス」(原題 Stranger Than Paradise)/「太陽はひとりぼっち」(原題L’eclisse)/「ビートルズショウ」/「勝手にしやがれ」(原題À bout de souffle)/「気狂いピエロ」(原題Pierrot Le Fou)/「仁義なき戦い」/「絹の靴下」(原題Silk Stockings)/「女と男のいる舗道」(原題 Vivre sa vie: Film en douze tableaux) /「パリの恋人」(原題Funny Face)/「ローマの休日」(原題Roman Holiday)/「小さな兵隊」(原題Le Petit Soldat)/「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(原題Buena Vista・Social・Club)/「時代屋の女房」/「華麗なる賭け」(原題The Thomas Crown Affair)/「8 1/2」(原題Otto e mezzo)/「デイア・ハンター」(原題The Deer Hunter)

MANIWA COLLECTION 狼少年の映画ポスター展

日時: 2012年11月3日〜11月20日 10:00〜17:00
場所: 逓信舍 2F ギャラリー(滋賀県彦根市河原2-3-4)
TEL: 090-3267-7712

ギャラリートーク 11月20日17:00〜18:00

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

小太郎

DADA Journal 内の関連記事
スポンサーリンク