「がおん井の池」のこと

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 東近江市 2012年9月3日更新

生き物観察会の様子

 総本山永源寺の脇を流れる愛知川に沿うように走る道をわずかに下った、東近江市永源寺高野町に「がおん井(ゆ)の池」がある。3年前、同町の住民有志で組織した「高野の山里を愛する会」のメンバーが休耕田を利用して手作りしたビオトープ池だ。
 8月18日、約70人の町民が参加して「生き物観察会と案山子コンクール」が行われた。
 子ども達も協力して作った案山子が見守るなか、池では網やバケツを使って魚つかみが始まった。
 がおん井の池に棲んでいるののは、ヌマムツやカワムツ、メダカ、ザリガニ、ヌマエビ、タモロコなどなど……。子ども達にギンヤンマのヤゴを見せながら、「背中に小さな羽根があるよ」、「背中に卵を背負っているので、コオイムシって言います。とても珍しい生き物です」と、生き物の名前や特徴などを教えていたのは、自然環境調査などを行う(株)ラーゴ(近江八幡市)の研究員・阿部司さんだ。
 阿部さんは、「コオイムシやタイコウチという珍しい生き物を見る事が出来ました。池は、平野部の河川と渓流の両方の特徴を備えているといえ、周辺にある森林や雑木林とのつながりが良好に保たれていることがわかります。冷たい、新鮮な水がどんどん入っていることも多様な生物を育んでいる理由の一つでしょう」と話してくれた。
 「高野の山里を愛する会」の代表を務める糟井信吾さんは、池を作った際に近くの川などで捕まえた生き物を池に放ったと言われたが、野鳥が餌にする姿を見かけることもあって、こんなにたくさんの生き物が棲んでいることに感慨ひとしおの様子だった。

コンクールのための案山子作り

 がおん井の池に流れ込む新鮮な水は、大正年間に作られたと伝えられる「がおん井」の隧道からパイプで流れてくる。昭和55年(1980)、永源寺ダムができるまで、周辺は農業用水の確保に苦渋した土地だった。先人たちは、愛知川や湧水の水を田に引くため、多くの用水を作った。「がおん井」もその一つだ。
 ガオンは朝鮮語で開墾を意味する語に読みが似ているそうで、呼び名の起こりは定かではないが、開墾によって開かれた土地「ガオン」を潤す用水なので  がおん井  と呼ばれたのではないだろうか……?
 ダムの完成によりがおん井は役目を終えたが、現在、いくつかの湧水が集まって来るのか、水の流れは絶えることがないそうだ。糟井さんにがおん井のお話を聞いて、「がおん井の池」と名付けられたことが無性に嬉しくなった。
 糟井さんは、「会は昔の山里の風景を取り戻そうと活動しています。ここで、地元の人たち、子ども達も一緒に、自然の大切さ、人と自然のつながり、人と人のつながりを考えていけたら良いですね」と話した。がおん井の水がいつまでも池を潤し続ければ良いなぁ、不思議で親しみを感じるこの名前が、結構気に入ってしまった。

めい

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