佛ヶ淵の千手観音

長浜市川道町

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 長浜市 2009年11月24日更新

「佛ヶ淵跡」と刻まれた石碑

 長浜市川道町の西、集落のはずれ、「佛ヶ淵跡」と刻まれた石碑が姉川と山本山を背景に建っている。
 こんな話が伝わっている。
——もともとは現在の木之本町杉野に祀られていた観音さまが何らかの理由で村を流れる杉野川を経て、高時川から姉川に至り川道にたどりついた。——
 故に、佛ヶ淵という。石碑の場所はかつての姉川の流れを示しているのだろう。
——立派な観音さまだったので、川道の人々は喜び、千手観音像を本尊としたお堂を建立した。以来観音像は「川道の観音さま」という名で親しまれるようになった。あるとき、観音像は杉野のものらしいとわかる。もし杉野から観音像を返してほしいという申し出があったら…と考えた川道の人々は、本尊を真似て造った「代わりの仏様」を杉野に返そうと考えた。しかし杉野から申し出はないまま時は過ぎた。
 現在「川道観音千手院」には、ご本尊と共に代わりの仏様「御代仏(ごだいぶつ)」が祀られている。——
 千手院の隣には、オコナイで知られる川道神社がある。明治の神仏分離までは「観音さまの鎮守さん」としての神様だったそうだ。信仰心篤い土地柄である。
「流れ着いた千手観音像は、いわゆる『拾いあげた物』ですから返さねばならないとはわかっていたのでしょう。けれどご本尊は川道の人々にとって御代仏を造らせるほど大事な心の拠りどころだったのです。それは今も変わりません。この千手院は檀家をもたない寺ですが、地域の人々の篤い信仰によって守られています」。
ご住職の岩崎英俊さんが教えてくださった。

川道観音千手院

 ご本尊のご開帳は17年に一度で、次は平成24年。本堂には明治に撮影されたというご本尊の写真が掲げてある。御代仏は年に一度のご開帳で終わったばかりだったが、特別に見せていただくことができた。2mほどのどっしりとした立派なお姿である。写真のご本尊とはうりふたつという感じではないような気がした。「ご本尊は約1200年前に彫られたことが調査からわかっています。川道にたどりついたのは約700年前のこと。御代仏はそれ以降に造られたと考えても時代も違いすぎますし、お顔はさほど似ていなくても仕方ないのかもしれません」。
 「佛ヶ淵跡」……、石碑を見る度に、記憶は蘇る。もし今、千手観音像を返してほしいと言われたら……。「さすがにもう時効でしょう」と岩崎さんは笑って居られた。700年の間、川道でお世話をし、お守りしてきた誇りがそう言わせるのだろう。
 今年も暮れゆく紅葉に染まる境内を後にして「佛ヶ淵跡」の石碑までを歩く。湖北の人々は、何百年も前のことを我がコトとして昨日のことのように話す。だからこそ、言葉の向こう側に、真実が潜んでいるのではないだろうか。

 

川道観音千手院

滋賀県長浜市川道町452 / TEL: 0749-72-2169

ご本尊のご開帳は平成24年秋を予定。御代仏は毎年11月にご開帳。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

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