逆さま世界 彦根の穴場・暗い部屋

スミス記念堂 カメラ オブスキュラ

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2009年9月28日更新

会場となるスミス記念堂。

 吹く風が気持ちいい……。
 台風の気配をはらんで、街路樹が風の姿を映している。清秋とはよく言ったもので、空気が澄み、世界の何もかもがはっきりとした輪郭を持ち始める。高度を下げた太陽のせいもあるかもしれない。屋外が気持ちいい季節だが、「カメラ オブスキュラ(暗い部屋)」というインドアイベントが、彦根の近代化遺産「スミス記念堂」で行われている。
 記念堂は、昭和6年、アメリカ人牧師で彦根高等商業学校(現滋賀大学経済学部)の英語教師だったパーシー・A・スミス氏が日米両国の交流を願い建てた全国的にも珍しい和風礼拝堂だ。
 平成8年、道路の拡幅工事により取り壊しの運命にあったが、市民の保存活動により解体保存され、平成19年3月現在の場所に移築された。解体・再築・運営費用は全て善意の募金により賄われ、現在も募金活動は続いている。平成19年9月21日、国の登録有形文化財となった。

カメラ オブスキュラは巨大なピンホールカメラだ。

 さて……「カメラ オブスキュラ」は、本来、素描を描くために使われた装置のことで、フェルメールをはじめ、17世紀ごろの画家たちはよく使っていたらしい。
 簡単に説明すると、文字通り「暗い部屋」の片方に小さな針穴(ピンホール)を空ける。すると外の光が穴を通り、穴と反対側の壁に像を結ぶ。画家は、映った像を紙の上に描き写すことで、実際の光景とそっくりの下絵をつくることができるというわけだ。写真撮影の機械を「カメラ」と呼ぶのはカメラ オブスキュラに由来する。
 つまり、今回のイベントはスミス記念堂そのものが、ピンホール・カメラになっていると考えればいい。
『お堂を真っ暗にする→穴を作る→光が入る→お堂内部に逆さまの景色が映る→暗い部屋で映った光景を見て楽しむ』。
 海外には観光施設として「カメラ オブスキュラ」があるそうだ。 ところで、撮影技術の日本伝来は長崎の商人・上野俊之丞が機材一式をオランダから輸入した1848年で、日本人で初めて撮影に成功したのは、薩摩藩主・島津斉彬だと言われている。スミス記念堂のカメラ オブスキュラが、「井伊直弼と開国150年祭」の市民創造事業として行われているのは、カメラが幕末に日本伝来した技術だからである。
 しかし…、季節はまさに清秋。外は気持ちいい風が吹き抜け、秋の光は木々の葉をこぼれ落ち、深呼吸すれば少し冷たい空気が肺に満たされる。それでもワザワザ「暗い部屋」を作り……、穴から入る光景楽しむのが、何ともいい。
 クリアな風までも写し込む像が期待されるカメラ オブスキュラは、屋外の光が明るければ明るいほど、堂内の像も明るく鮮明になる。この季節穴場となるのだろう……。

 

スミス記念堂 カメラ オブスキュラ

2009年9月27日 / 10月18日 / 11月22日(見学無料)
各日3回興行 13:00〜14:00 / 14:15〜15:00 / 15:15〜16:00

ひこにゃんが登場する時間帯の見学は事前のお申し込みが必要です(抽選で定員25名)。住所・氏名・電話番号を明記のうえ、事務局までハガキでお申し込みください(ハガキ1枚につき1名でのお申し込み / お1人様1枚限り)。締切 10月10日必着

お申し込み・お問い合せ
〒522-0064 滋賀県彦根市本町2-3-3 / TEL: 0749-24-8781
NPO法人 スミス会議事務局「カメラオブスキュラ」係

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

小太郎

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