西明寺「はさみ石」

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 甲良町 2018年7月24日更新

 平成3年のことだから1991年、僕は『湖国百選 石 / 岩』(企画・発行 滋賀県(企画部地域振興室)/ 編集(財)滋賀総合研究所)という書籍の取材をしていた。編集協力という形で20ヶ所ほどを担当した。懐かしい思い出である。このとき僕は、「西明寺の石」について記事を書いている。その中に「はさみ石」の記述がある。
 「西明寺山門から参道を登っていくと、谷川に五本からなる石橋が架かっています。その橋の左二本の石がはさみ石で、昔の握りバサミの形をしています。
 女の人がこの石を踏むと裁縫ができなくなるといわれ、避けて通るように教えられていました。また、なぜか、手の不器用な人は、きまってこのはさみ石を踏んでしまい、踏んでからこの石に気がつくのだそうです」。

 6月末、湖東三山西明寺を訪れた。緑が深く雨上がりの朝には苔の緑が映え清浄な空気が漂っていた。この日の取材目的は簡単に言えば西明寺の国宝や重要文化財についてだったが、趣旨はもっと奥深い。取材を終えて僕は改めて山門から本堂までゆっくり歩いた……。何処へ行っても、こういう空白の時間がこの上なく愛おしい。
 『湖国百選』は、豊かな自然に恵まれ、四季折々の風景が楽しめる美しい郷土、滋賀県の多彩な地域資源のなかから優れたものを再認識し、将来に向けて守り育てていくことを目的として企画された出版物である。「石/岩」の他、「水」「木」「街道」「人」「祭/踊」など10冊を数える。今はもう図書館でしか読むことができないだろう。
 「世界は驚きと奇跡に満ちている。しかし、人間は、その小さな手で目を覆い、何も見ようとしない」というのは、ユダヤ人の宗教家の名言らしい。再発見は自らがするものだ。学び、気づき、調べ、想像し、突然扉が開く。6月末の西明寺で、僕の気持ちに残ったのは苔の美しい参道と「はさみ石」であった。

小太郎

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