がま仙人との出会いは水無月に

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2018年7月6日更新

宗安寺(彦根市)劉海蟾(りゅうかいせん)
仙人は人気なのだろう。鳥山明の漫画『ドラゴンボール』の亀仙人は、武天老師と呼ばれる武術の達人で、「かめはめ波」を編み出した人物。亀仙人のライバルは鶴仙人。『封神演義』(ほうしんえんぎ)は文字通り中国の古典『封神演義』を元にしているし、『ナルト疾風伝』の仙術や仙人モードはあまりに有名だ。

 龍潭寺の方丈に、森川許六の「方丈襖絵」(彦根市指定文化財)が104面(襖56枚)あり、間近で観ることができる。訪れたときにはいつも気になる文化財である。
 許六は彦根藩士で、本名を森川百仲、通称を五助、五老井・菊阿佛・無々居士を号し、許六という名は、「蕉門十哲」の一人としてよく知られている。「六芸に秀でたる才人」と芭蕉がつけたといわれ、俳諧は芭蕉が師となり、絵は許六が師となったという。
 龍潭寺方丈の各10室にはそれぞれ一つずつの画題が描かれている。麟鱗鳳凰図(仏壇の間)・西湖図(室中)・群仙図(上間一の間)・松竹梅鶴図(上間二の間)・竹林七賢図(下間一の間)・牡丹唐獅子図(下間二の間)・秋草兎図(東入側一の間)・龍虎図(東入側二の間)・群馬群禽図(西入側一の間)・四季耕作図(西入側二の間)。お気に入りは群仙図で、9人の仙人を描いている。
 2〜3年前、「仙人系男子」という言葉が誕生した。ネットでは、『恋愛に関して奥手と言われている草食系男子よりも、さらに恋愛への興味関心が薄い男性。あたかも自らの力で悟りを開いたかのような寛大な心で、人々の心をやさしく包みこむ人間性が大きな魅力のひとつとなっている』と前置きし、具体的な特徴と攻略法まで記されていた。「仙人系男子」は「草食系男子」よりも女性に人気があるという。
 群仙図の9仙人のうち僕には3人を特定できないが、6人まで名前を言うことができる。彫刻や絵画に登場する仙人にはそれぞれ特徴があり、特別なアイテムや生物と共に描かれているからだ。
 方丈襖絵は、鯉に乗って滝を登る「琴高(きんこう)」、亀に乗った姿で描かれる「黄安(こうあん)」、ボロボロの服と杖の「李鉄拐(りてっかい)」。そして蛙と共に描かれる「劉海蟾(りゅうかいせん)/蝦蟇仙人(がませんにん)」。蝦蟇(がまがえる)を使って妖術をおこなったとされる仙人だ。釣り竿を持っているのは「太公望(たいこうぼう)」だろうか。瓢簞から駒(馬)を出しているのが「張果(ちょうか)」だ。
 知識が足らず、僕には後の3人の仙人が誰なのか判らないが、少し前の時代には誰もがそれと知っていたモチーフだと思うと、気になって仕方ない。韓湘子(かんしょうし)、呂洞賓(りょどうひん)、漢鍾離(かんしょうり)という名が浮かぶがアイテムの決め手が無い。森川許六の挑戦のようにも思えた。
 頭の中が仙人モードだったからだろうか、彦根の本町にある宗安寺の参道の石像が蛙の上に乗っているのに気付いた。宗安寺には行者堂があるので、役小角(えんのおづの)の石像だと思っていたが、がま仙人、「劉海蟾」に違いない。
 6月、水無月、蛙の季節…、仙人と蝦蟇。何かの予兆であると思うことにした。何の予兆だったのかは、想像力は知識を越えることはない程度に、後になって判ることになっている(そういうものだ)。
 ちなみに、これはと思った仙人に出会ったら、それが誰なのか調べてみることだ。仙人の特徴と仙人を示すアイテムの知識が少しずつ増えていくに違いない。何かの役にたつこともなく、誰にもほめられることもないが、いつものまち歩きが少し楽しくなるほどの効用はあるだろう。

 

小太郎

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