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半月舎だより 18

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2018年4月30日更新

Kさんの本棚

 2月なかばから3月上旬にかけての3週間、半月舎に「インターンシップ生」が来ていた。京都のデザイン系専門学校の一年生で、Kさんという18歳の女の子だった。
 インターンシップとは学生の就業体験のことで、本人から申し込みのメールをもらった時は戸惑った。受け入れはもちろん、自分が学生時代にインターンシップを経験したこともない。古本の仕事というよりは、半月舎の副業であるデザインの仕事を手伝ってもらわなくてはならないと思ったが、手伝ってもらうほどの仕事はそんなにない。古本など、デザイン以外の仕事が主になってしまうと伝えたが、それでもかまわないということで、断る理由もなく、来てもらうことになった。
 Kさんは口数の少ないひとで、ひとたび仕事をお願いすると、終わるまでもくもくと取り組んでくれた。人見知りどうしのわたしたちはなかなか打ちとけなかったけれども、引き取りに本の掃除に、古本の仕事をひたむきにしてくれる姿がうれしかった。
 インターンシップの一週目に、「自分でなにかテーマを決めて、舎内の本で一箱つくってみてください」というおおざっぱなお題を出してみた。Kさんは時間をかけて真剣に本棚を見て回って、一箱ぶんの本を選んで並べてくれた。
「行ったことのある場所と、興味のあるものをテーマにしました」とのことで、たとえば「ハワイアンキルト」(キャシー中島 著)だったら「高校の修学旅行でハワイに行ったので」とか、「図説 日本刀事典」(歴史群像編集部 編)ならば「日本刀を擬人化したゲームが流行っていて」というように、なぜこの本を選んだのかと尋ねると、Kさんの人となりが少しずつわかるような本棚だった。その本棚のおかげで、ようやくわたしたちは打ちとけていったように思う。
 ところでKさんがいる間、わたしたちは毎日お茶をしていた。なぜなのかその期間、よくもらいものをして、3時のおやつにこと欠かなかったのだ。Kさんは最終日に「お礼です」とお菓子をくれた。どこのお店のものか分からなかったけれど、手作りの素朴な味だった。そしてふしぎなことに、Kさんからもらったそのお菓子を最後に、ぱたりともらいものをしなくなり、半月舎は3時のおやつのない日々に戻ったのだった。
 3月の終わり、Kさんのつくってくれた本棚の本を、もとの棚に戻していたとき、お菓子づくりの本が多いことに気づいた。そのとき初めて、もしかしたら最後にくれたお菓子は、Kさんの手づくりだったのかもしれないと思い至ったのだった。

(M)

編集部

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