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半月舎だより 16

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2018年3月21日更新

冬の古本研修旅行 高知編

 彦根に暮らすようになって13年、未だにこのまちの冬の寒さ暗さには慣れない。たまらなくなって、昨年から「研修旅行」と称し、真冬の数日間あたたかい地方へ逃避行することにした。なぜか同行を申し出てくれた長浜の同業者Nさんとふたり、ひたすら古本屋を(ときには新刊書店も)目指す旅である。今年は高知と香川へ赴いた。
 滋賀から車を走らせること数時間、高知に到着した日の夕方に早速目指したのは、街中にある老舗「井上書店」さん。なんと創業78年、2代目だというほがらかな老夫妻が切り盛りする古本屋だった。「終戦直後はみんな活字に飢えていたから、帳場まで行列ができて、本が飛ぶように売れたそうですよ」なんていう、古本屋にとって夢のような話も聞かせてくれた。古本業7年目という若輩のわたしたちにも垣根なくさまざまなことを話してくれ、「インターネット販売してますか?うちのひともほんとは嫌みたいなんですけどねえ…背に腹はかえられませんから」という奥さんの口ぶりに悲壮感はなく、さばさばして風通しのよい感じが高知らしく思えた。
 2日目に向かったのは、高知市から車で1時間ほどの香美市香北町、ぐるぐるとくねる山道を車でのぼりつめた先にある「うずまき舎」さん。神戸から移住した女性が2014年に開いた、古本と新刊をあつかう小さな店だ。半月舎よりも狭いだろう空間で喫茶まで提供していて、店主の村上さんは訪れるお客さんに「まあまあ遠くまで、ようこそ」とお茶を配っていた。村上さんが売りたいと思う本だけを置いていることがわかるぜいたくな棚に囲まれると、小さな店だけれども時間はあっという間に流れた。わたしは、地元の詩人の本を買った。
 店の入り口の近くに立つと、山と山の間に遠く海が光って見えた。ふと見ると、入り口の近くに双眼鏡が置いてあった。まぶしそうだったので覗くのをやめたが、村上さんが海に向かって双眼鏡をのぞいているのを想像した。高知では夜毎おいしい海鮮を楽しんだというのに、そういえば高知で海を見たのは、このときだけだった。

M

 

編集部

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