狐穴と寒施行

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2018年2月26日更新

寒施行のお供え

 「彦根ゴーストツアー」が、2月17日・18日にあった。このツアーは「見えないモノ」を「ゴースト」と位置づけ、現世(うつしよ)と幽世(かくりよ)の狭間、未評価の文化資源を巡る。今回は「妖怪探訪の章」だった。僕も参加したが最も刺激的であり感動したのが豊勝稲荷の「狐穴」と「寒施行」だった。
 豊勝稲荷は中山道高宮宿、犬上川沿いにある宿場町の稲荷だ。11月と2月の第一日曜日に大祭が行われている。明治初期、個人の家で祀っていた稲荷を「門口」の字の人々でお世話をするようになった。連なる稲荷の鳥居と立派な社があり、この稲荷を個人宅で祀っていたのだから、高宮の繁栄ぶりがうかがわれるというものだ。
 この豊勝稲荷には、「せんぎょう」或いは「せんぎょ」と呼ばれるお供えの風習がある。多賀町猿木の堤防沿いの森と甲良町小川原の小川原神社に、油揚げの上に赤飯のおにぎりをのせたお供えを持って行く。昔は子どもたちの役目で、豊勝稲荷からの道中、提灯を持ち「せんぎょう、せんぎょ」と唱えて歩いたのだという。そして、何故、「せんぎょう(せんぎょ)」というのか誰も判らない。判らないが今も昔も同じように「せんぎょう」が続いているところが面白い。

旧上魚屋町稲荷

豊勝稲荷

 「せんぎょう」の言葉の意味としては「先業:先人ののこした事業・遺業。」「瞻仰:あおぎ見ること・見上げること・敬い慕うこと」があるが、多分、失われた意味があったに違いない。
 「せんぎょう」という言葉が気にかかり調べてみた。少し時間がかかったが、「せんぎょう」は「せぎょう」であることが判った。「施行」と書く。大抵は「しこう」と読むが「僧や貧しい人々の救済のため、物を施し与える」ときには「せぎょう」と読む。
 特に、「寒施行」は、野山に食べ物が少ない時期に、小豆飯・油揚げなどを田畑やキツネの巣穴の近くに置き、施しをする年中行事をいう。俳句の季語でもある。現代は商売繁盛で有名な稲荷だが、かつては豊穣の神でもあった。田の神・山の神、その神使であるキツネへの施行はごく当たり前のことだったのだ。
 豊勝稲荷の「せんぎょう」「せんぎょ」は、「せぎょう」が時を経て「せんぎょう」「せんぎょ」と変化し、本来の意味は忘れられ、形だけが受け継がれていったのだろう。
 「彦根ゴーストツアー」では、実際に赤飯と油揚げでお供えを作り「せんぎょう、せんぎょ」と唱えながら寒施行を体験した。
 寒施行も刺激的だったが、感動的だったのは、豊勝稲荷の社の裏に鳥居があり狐が出入りできる穴があいていたことだ。150年以上ずっとこの稲荷の社には狐穴が在るのだ。
 更に、「彦根ゴーストツアー」で訪れた彦根市本町の宗安寺の稲荷社にも狐穴が存在していたのである。「旧上魚屋町稲荷」という。注目すべきは社を昭和56年に新築しているのだが、そのときにも狐穴を残していることだ。
 さて、二つの稲荷社の社の裏に狐穴があった。他の稲荷社にもあるに違いない……。ツアー以来、僕は稲荷社を見つけると、社の裏側へ回り穴の有無をドキドキしながら確かめている。ご近所の稲荷社に狐穴があれば、是非ご一報を!

淡海妖怪学波

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