冬の伊吹山を登る

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 米原市 2016年3月4日更新

 山に登るようになってから、いつしか憧れというか目標のように思っていたことがある。それは、「雪山に登る」ことだ。雪山となるとやはり伊吹山に登りたい。冬の伊吹山は、アルプスの山々には及ばないものの本格的な雪山の要素を備え、天候がよければ初心者でも登れないことはないという。登山者の中には、伊吹山には冬にしか登らないという人も多いようだ。さらには、下りを雪遊びのヒップソリで滑る「尻セード」なるものもあって、伊吹山は尻セードのメッカだというのだ。
 雑誌の記事を読んだりネットで調べたりして、冬の伊吹山への憧れは募るばかり。雪山デビューの来たるべき日に備えて、この1年、少しずつ道具を集めてきた。その甲斐あってアイゼンとしっかりした登山靴、雪用のゲイターにグローブとなんとか雪山に行っても大丈夫なくらいの装備は一通り揃っていた。

三合目を過ぎたあたり

 もちろん、最初から一人で登るのは無謀だと思っていたので、雪山経験のある登山の先輩に連れていってもらうつもりをしていた。しかしこの冬は全国的な暖冬。1月になってもほとんど雪は積もらないし、積もっても数日のうちに融けてしまう。なかなか予定も合わず、2月に入っていよいよ今年は見送りかとあきらめかけていた矢先、8日、9日に寒波がやってきた。具合のいいことに11日は祝日で、しかも天気がいいとの予報。意を決して一人で行くことにしたのだった。
 そして迎えた2月11日。予報通り雲ひとつない快晴。また夜が明けぬうちに自宅を出て、7時過ぎに上野登山口に到着した。気温はマイナス3度。放射冷却でずいぶん冷え込んでいたようだ。寒さに凍えながら支度をして登りはじめる。一合目までは樹林帯。もちろん雪はない。冷えた体が温まるように足早に歩く。一合目まで登ると視界が開ける。旧伊吹山スキー場のゲレンデだ。ゲレンデに積もった雪が朝日を反射して眩しい。先を見渡すと先行する登山者の姿がたくさん確認できる。今日は雪山日和、みんなここぞとばかりに登りに来ているのだ。

八合目を過ぎて最後の直登

 三合目で小休憩。目指す山頂はまだ遠い。このあたりから雪が多くなってくる。すでにアイゼンを装着している人もちらほら。さらに登って六合目あたりからはつづら折りの夏道ではなく雪で埋まった斜面を真っ直ぐ登る「直登」がはじまる。この直登こそが冬の伊吹山の醍醐味だ。
 天気はこの上なくよく真っ青な空が広がり日差しが強い。急な坂を登り続けていることもあって汗が噴き出してくるほどだ。雪道は基本的に、先行者の付けたトレース(踏み跡)をたどりながら進んでいくが、ところどころでトレースが分岐していることがある。これは夏道を進んだ人と直登した人それぞれの踏み跡が残っているからだ。どちらを進むか考えながら登るのも楽しい。そうこうしているうちに八合目に到着した。いよいよここから最後の直登、冬の伊吹山のハイライトだ。最後の直登に備えてアイゼンを装着する。
 雪が少ないとは言え、山頂直下はトレースを踏み外すと膝上くらいまで埋まるほど。一歩一歩足を置く場所を考えながら登る。ああ、この瞬間のために登ってきたんだなと感慨を噛みしめながら。そして、山頂の遊歩道へと到着した。登山口を出発してからちょうど3時間が経っていた。山頂は意外なほど多くの登山者で賑わっていた。さらに、下からもまだたくさんの人が登ってきている。ざっと見渡しても50人以上の登山者がいたのではないかと思う。

白山から乗鞍岳、御嶽山までよく見える

 穏やかな天候だと思っていたが山頂では身を切り裂くような冷たい風が吹き荒れていた。手元の温度計は1度を指している。体感温度はマイナス5度、いやもっと寒いかもしれない。しかし、空気が澄んでいるため眺望は最高だ。北東には白山から北アルプス、乗鞍岳、御嶽山、南東には、霊仙山をはじめとする鈴鹿山脈、そして湖西の比良山系もよく見える。ひとしきり眺望を堪能したあと、すぐに下山することにした。寒すぎてゆっくりご飯を食べる余裕もなかった。
 下りは直登してくる人を避けて夏道を下った。あっという間だった。せっかく来たのに少しもったいないような気もしたが、また雪の多いときに再び訪れるときのために楽しみはとっておこうと思った。今度は尻セードも。
 しばらく雪山への興味は尽きそうにない。

はじめ

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