彦根りんご復活とロームビューティー

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2009年5月24日更新

平成の彦根りんごの花

 和名を「芹川」というリンゴが彦根のリンゴ園で栽培されている。「ロームビューティー」という品種で、現在、国内で栽培されているのはここだけであるという。
 アメリカでロームビューティーという新品種のリンゴが発見されたのは1816年。明治時代に他の西洋リンゴと共に日本に輸入された。国内では青森の芹川さんという人が栽培していたそうだ。和名の由来はそこからで、彦根とは直接関係ない。
 しかし、ロームビューティーが栽培されるようになった経緯には「彦根りんごを復活する会」の6年にわたる物語がある。

ロームビューティー

 かつて、彦根の特産品にリンゴがあった。リンゴといえば、青森や長野を思い浮かべるが、江戸時代には蝦夷地(北海道)から九州まで、全国でワリンゴが栽培されていた。ワリンゴは中国から伝来した品種で、古くは平安時代の文献にも記されているという。

『彦根市史』には、彦根のご城下や中山道の宿場町で彦根の名物として販売されていたとある。江戸時代後期の文化13年(1816)には、藩士が商品作物として本格的に生産を始めたらしい。これが「彦根りんご」である。しかし、昭和初期には西洋リンゴに市場を取って代わられ姿を消した。
 この幻のリンゴを平成の時代に復活させようと活動を始めたのが「彦根りんごを復活する会」である。
 手がかりは、岡島徹州氏が描いた絵のみ。国の農業関係機関にリンゴの野生種が保存されていることが判り、「彦根りんご」を求めてワリンゴの収集が始まった。約10種を集め、その中から、開花や結実の時期、絵と比較して「彦根りんご」に最も近い外観と、記憶をたどって最も近い味の品種を特定した。

平成の彦根りんごの実

「彦根りんごを復活する会」は全国のワリンゴを調査する傍ら、ワリンゴの栽培に関しては国内最先端の研究グループに成長し、会員が接木したワリンゴの木を「平成の彦根りんご」として育てている。会長の尾本正和さん(58)にお話を伺った。
「昨年、『平成の彦根りんご』を初めて収穫することが出来て、会員一同、喜んでいます」。
 会員限定のリンゴ園を案内していただいた。「平成の彦根りんご」をはじめ、全国のワリンゴや野生種がちょうど花の盛りを終え、若葉の中に小さな実をつけ始めていた。
「彦根藩で本格的にワリンゴ栽培が始められたのと同じ年に発見され、後に芹川と名付けられた偶然の一致で、栽培することにしました」。
 芹川沿いのリンゴ園では、10本のロームビューティーを見ることができる。
 復活する会では、2016年に「彦根りんご200年祭」を企画し、それに向けて新たに200本の彦根りんごのオーナー会員を募っている。200年祭後に、会員の家に植えかえられ、「彦根りんご」はさらに広がっていく予定である。
 桃栗3年柿8年、来年から彦根の特産品に再びリンゴが……。もはや、幻や夢物語ではない。

幻の彦根りんごの花を咲かせ、実を生らそう

彦根りんごを復活する会では、新たに200本の彦根りんごの木のオーナーを募集している。
募集期間: 2011年3月末まで(期間中でも200本が決定し次第終了)
応募資格、会員特典など詳しくはお問い合せください。

彦根りんごを復活する会
滋賀県彦根市西今町542 / TEL&FAX: 0749-24-2855

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

F・B

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