ほんとうに大切なこと

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2016年2月19日更新

 ほんとうに、ほんとうに、ほんとうに、僕らは何が大切なのだろう……と考える。
 湖国の町を歩くと、何か大切な願いを込めたようなものにであうことがある。「司馬光 瓶割の図」もそのひとつだ。少し前に撮ったものだ。「幼い司馬光は、遊んでいるうちに水瓶に落ちて溺れる友人を瓶を割って助けた。司馬光の父は、大切な水と貴重な水瓶を失ったが、機転をきかせて友達の命を救った司馬光を褒めた」という故事が元になっている。司馬光は、中国・北宋時代の学者として名高く、人望も厚かった人物だ。司馬光を褒めた父がカッコイイ。
 何故、この意匠を屋根に載せたのか。勿論、火伏せの意味もあったのだろうが、子ども達に司馬光のように育てと願い、或いは、司馬光の父のように子を育てる親になりたいなどの念いもあったに違いない。
 僕は写真を撮ってから、調べて瓶割の図を知ったのだが、少し前までは誰でもこの故事を知っていたのだろう。
 屋根の上の瓶割の図の意味を知らなくても生きて行くこはできるし、明日、取り壊されたとしても誰も困らない。失われたとしても誰も困らない。
 しかし、少なくともこの瓦はとても大切なものだと僕は思っている。
 屋根の上の瓶割の図は、家々が重なり、写真の角度が精一杯で、どうしても正面から撮ることのできない位置にある。かつては、誰もが毎朝見上げることができたのかもしれない。そして、皆、語り、故事に自らの生き方を照らし合わせ暮らしていたのだろう。
 湖国の町を歩き、何か大切な願いを込めたようなものにであう。そういうところで暮らすことができ、この町をまた少し好きになっていくのだ。
 僕は、毎日、世の中の役にたつような記事を書いていない。僕の記事が無くても誰も困らない。ほんとうに、僕らは何が大切なのだろう。

小太郎

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