兎の釘隠
岐阜県高山市を訪れる機会があり、「高山陣屋跡に兎の釘隠があるよ」と教えてもらった。僕は「波と兎」の文様のコレクターだ。高山市のホームページを見ていると青海波と兎を組み合わせたデザインが背景に施されていることに気づく。多分、高山陣屋跡の兎の釘隠に由来するのだろうと考えていた。しかし実際は、写真のように青海波は無く、正面から見た姿をモチーフにしたデザインの釘隠だった。「真向兎(まむきうさぎ)」という名があることを知った。
「因幡の白兎や、月で餅をつく兎の話など、兎は昔から人間に幸せをもたらす動物であり、幸福招来の意で用いられています。又、長い耳で領民の意見をよく聞けとの意もあると言われています。陣屋内には152個あります」と説明してあった。
高山陣屋は徳川幕府直轄領の代官所で、元禄5年(1692)から明治維新(1868)までの177年間、その使命を果たした。江戸時代の陣屋のうち唯一現存するのがこの高山陣屋である。「長い耳で領民の意見をよく聞けとの意もある」というのも納得できる話ではある。僕は「真向兎が152個」という数に何か秘密があるのではないかと今も考え続けている。
ところで、ほとんど知られていないが「真向兎」は、彦根の埋木舎の一室に施されている。そして、真横から見た兎をモチーフにしたデザインの釘隠もここにはある。「直弼公は必ずこの兎の釘隠に触れてからお出かけになった」と聞いたことがある。彦根では「井伊直弼公生誕200年祭」が開催されている。近くからもう一度見てみたいものだ。
【小太郎】