インタビューからはじまる日中の架け橋

彦根100人インタビュー

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2015年7月31日更新

左から江俊潔さん、菅昌絵さん、李婉珍さん、陳晶さん 

 最近になって、「彦根100人インタビュー」という企画のことを知った。彦根に住む中国人留学生が、彦根で活躍する100人の日本人にインタビューを行い、ウェブサイトを通じてインタビュー動画を発信していくという試みだ。NPO法人彦根中国語会が中心となって2013年の12月にスタートし、現在までに15人にインタビューをしてきた。
 100人インタビューのそもそものきっかけは、尖閣諸島問題をはじめとする最近の日中関係のもつれだ。両国の関係がぎくしゃくするなかで、留学生の両親や友人から心配の声が多く聞かれるようになったのだそうだ。そんな中国に住む家族や友人・知人に、日本のことや留学先である彦根のことをもっと知ってほしいという思いから、彦根に住む留学生100人が彦根の人100人にインタビューする取り組みが始まった。
 僕はこの話を聞いた当初、数人の留学生がチームになって100人にインタビューを行うものだと思い込んでいたのだが、詳しく話を聞くうちに、それでは全く意味がないことがよくわかった。インタビュアーである留学生が多ければ多いほど、その家族や友人・知人に見てもらえる機会が増えて、より多くの中国の人々に日本のことを知ってもらえるチャンスになる。だから留学生100人がインタビューするというところがポイントなのだ。
 このプロジェクトの中心メンバーのひとり、江俊潔さんは滋賀県立大学の留学生だ。自身ももちろんインタビュアーとして参加し、その後はインタビュアーの留学生を探したり、インタビューの撮影を手伝ったりと事務局的な役割を担っている。留学生を探すのは大変な作業で、趣旨に賛同してはもらえるものの、スケジュールが合わなかったり、初対面の日本人と日本語で話すというハードルの高さから敬遠されてしまったりすることもあるそうだ。しかし、留学生にとってインタビューの経験が日本語への自信につながればという思いで続けている。
 事務局には日本人のメンバーもいる。滋賀大学の菅昌絵さんは、先輩の留学生からこの活動のことを知り、メンバーに加わった。主にサポート役としてインタビュー先の交渉などを担当している。宮崎県出身の菅さんは、この活動を通してより彦根のことを深く知ることができ、興味が持てるようになったという。日本のこと彦根のことを中国の人に知ってもらうということは、発信する自分たち自身が自らが住む街のことをより知らなければならないということでもある。
 インタビューを中国で視聴した留学生の家族や友人からは、「今まで思っていた日本のイメージと違う」「日本のイメージが変わった」という声が寄せられているそうだ。昨年インタビューに参加した陳晶さんは、「中国はもちろん、日本の人にも中国のことをもっと知ってほしい。この活動がそのきっかけになれば」と話す。
 当初3年の計画で始めたインタビューは、蓋を開けてみれば1年半で15人。100人までの道のりはまだまだ遠い。しかし、一人また一人とインタビューの活動を続けていくことで、日中の相互理解は少しずつ深まっていくのだろう。インタビューをする留学生とインタビューを受ける彦根の人という一対一の関係が、彦根と中国、日本と中国の関係として広がり日中の架け橋となることを願っている。そして、僕のところにもインタビューに来てくれないかなと密かに期待している。 

彦根100人インタビュー

http://www.hikone-hanyu.com/

お問い合わせ

NPO法人 彦根中国語会
http://hikone-zhongwen.jimdo.com/

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

編集部

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