音なりの庭 at コホウアン

　近江孤篷庵の近くに生まれ育った中居真理さんは、地元にいた頃は一度も孤篷庵を訪れたことはなかったという。周囲の自然を借景に取り込んだ庭、その庭を眺めるためにつくられた開放的な建物が気持ちよく、「近所にこんな場所があったなんて」と驚いたそうだ。「この気持ちのいい場所で音楽を聴いたりしたら気持ちがいいだろうなあ」という漠然とした思いから始まり、今回、「音なりの庭」という音楽イベントの企画をすることになったという。
　出演者は、タップと音楽を組み合わせたスタイルで活躍するバンドプロジェクト「コンゲイロ・トレス・フーファーズ」と、京都精華大学在学中、声とピアノを自在に操る注目の新星・中村佳穂。出演者は庭を舞台に演奏し、観客は孤篷庵の屋内から、庭と音楽を同時に楽しむのだという。一緒に企画をしている大和直矢さんは、「孤篷庵の空間と呼応するような、そして自分が孤篷庵で聴きたい・観たいと思うアーティストにお願いしました。孤篷庵は一度来たら何度でも来たくなるような気持ちのいい場所だから、近所の方も遠方の方も、このイベントがみなさんとお寺が『お隣』感覚になるご縁になればいいなと思います」と話してくれた。
　近江孤篷庵は、近江小室藩（近江国浅井郡小室。現在の長浜市小室町）の藩祖であり、江戸時代初頭きっての文化人として知られる小堀遠州の菩提を弔う寺院である。庭園は、作庭家としても手腕を発揮した遠州にならう、「遠州ごのみ」の庭だ。優れた芸術的感覚をもち、当時の文化の中心的人物だった遠州ゆかりの空間。緑滴る新緑の季節、孤篷庵の庭が最も美しいなか、どんな音が鳴るのか楽しみだ。

【はま】