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めぐりめぐる季節

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2015年4月27日更新

 「桜の季節が終わりを告げると柔らかい緑が一斉に芽吹き始める。それは鮮やかで、湿潤な透明度は、萎えるベクトルを存在理由にしている僕の気持ちにも、とにかくワッー!と鮮やかを注ぎ込むのには充分だった。おかげで、薄いピンクの花の季節から威勢のよい緑の季節の狭間に、黄色い世界があることを忘れていた。春の初め頃から黄色い世界はあるのだけれど、梅や桃、桜の花に気をとられ僕は愛すべき黄色い世界を思い出すこともしなかった。確かにオオイヌノフグリは銀河のようだったし、夜の桜は青く光っていた。春と初夏の狭間の黄色は「ね」に似ている。最近、「ね」というひら仮名がとても気になっているのだが、50音の中で単独で「ね」ほど様々な意味を表現することのできる文字はない。「な」の能力も大したものなのだけれども「ね」の敵ではない。「ね」は文頭でも、文尾においても独自のニュアンスを獲得しているのだから……。
「ね」は、季節の狭間の黄色?緑だけでは気持ちに入り込めない黄色いニュアンスが「ね」の持つ最大の能力かもしれない。点在する黄色、芽吹く緑……透明な季節がやっと訪れる。ヒトも輝きの粒々に同化できる季節だ」。
 これは、2001年のエディターズフリーキックだ。季節はめぐりめぐる。駄目だなーと思う。僕は何も変わらない。めぐりめぐっている……。

小太郎

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