ラクウショウ

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2014年6月11日更新

 彦根・荒神山の麓、琵琶湖側に大きな沼がある。曽根沼という。彦根に住んでいながら訪れることのない場所だった。5月も押し詰まった午後、大切な理由があって沼の周囲を歩くことになった。そこで、石筍のような奇妙な瘤に遭った。近寄りがたい神聖なもののように思えた。
 調べてみると、ヌマスギ(沼杉)という名を持つ樹木だと判った。スギ科の落葉高木。高さ25~50メートル。湿地では、根回りの地上に気根(呼吸根)を出す。北アメリカ南東部の原産。公園の水辺などに植えられる。別名を落羽松(らくうしょう)ともいう。杉なのに松と呼ばれているところも面白い。
 普通の場所では気根を出すことはないが、湿潤地だと気根を形成する。酸素の少ない環境でも正常に成長し、長期間の水没に耐えることができる。なんかすごいぞと、沼から伸び上がる気根を想像した。
 しかし、どうして北アメリカ南東部の原産のヌマスギが曽根沼にあるのだろう。
 曽根沼は、かつては低地ながらも陸地だったが、荒神山の山陰にあたり、宇曽川や愛知川の堆積が及びにくく沈水して内湖になったと考えられている。昭和36年から始められた干拓により約20ヘクタールに減少。約5分の1となった。
 昭和47年に始まる琵琶湖総合開発事業の一環として曽根沼公園へと整備されていく過程で、昭和50年代にヌマスギが植えられたらしい。
 曽根沼はヌマスギにとって適した環境なのだろう、立派な樹となり30年程で気根も見事に育っている。
 僕は、このヌマスギが気に入ってしまった。気根がどんな風に何処まで成長するのだろう。時々、あいに行こうと、そして、ラクウショウの名で呼ぼうと思った。ヌマスギではあまりにそのものすぎる。ラクウショウ由来もまた僕には興味深い。
 世界は知らないことばかりである。

編集部

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